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トシ・カプチーノ

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ToshiHeadShot_2014.jpegのサムネイル画像舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。



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ろうあ者のための再演ミュージカル「春のめざめ」

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10年ひと昔とはいうけれど、

 

 

ニューヨークに根を張って20年余り。 

 

 

長くこの地に住むこともまんざら悪くない。 

 

 

というのは、初演で観たミュージカルの再演に立ち会えるから。 

 

 

 

 

今回、ご紹介するのが、再演版「春のめざめ」(SPRING AWAKENING)。  

 

 

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初演を観ている古参のワタクシ。

 

エッヘン。 

 

批評家として比較材料を持っているというのは強い!  

 

この作品はドイツの劇作家、フランク・ウ゛ェーデキントが

 

19世紀に発表した戯曲「春のめざめ」をベースにしたロック・ミュージカル。

 

 

 

 

性的行為のみならず、

 

性的虐待、

 

中絶、

 

同性愛などを扱ったこの戯曲、 

 

発表当時はかなりなセンセーションを巻き起こして

 

発禁沙汰にまでなったのだそう。 

 

 

当時に比べれば、検索エンジンを手繰って

 

性的知識なんてバンバン溢れてくる、

 

それどころかアンナコトコンナコトマデ••••きゃー。

 

 

貞操や処女性が最重要だった暗黒の19世紀の若人に比べれば、

 

随分のラクチンな世の中になったもんですね。  

 

 

 

 

 ♪思〜えば遠〜くへ来た〜もんだ〜♪ by鉄也   

 

 

 

 

でも、でも•••いくら情報過多の時代だからって、

 

「春のめざめ」の動揺が、

 

それほど軽減されたとは思えない。

 

やはり「春のめざめ」もとい、

 

「春の七転八倒」は永遠のテーマなのですゾ!   

 

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さて通常よりちょっと早い再演・・・一体何があったのか?

 

 

 

もともと、本作が初演されたのは2006年。 

 

5年の歳月をかけて非営利団体

アトランティック・シアター・カンパニーによって制作されオフで開幕。  

 

前衛的なアイディアが詰まった作風を各メディアは大絶賛。 

 

開幕からたった2ヶ月で

 

オン・ブロードウェイへの進出が決まる大出世!

 

翌年、ブロードウェイ演劇界の頂点である

 

トニー賞ミュージカル作品賞に輝いたのさ。  

 

 

 

そんなご大層なヒット作をわずか10年足らずで再演とは•••? 

 

 

 

 

この度の再演版は、

 

 

Deaf West Theater Productionによって

 

 

耳が不自由な人のために制作された作品だということ。 

 

 

そう、手話を取り入れたミュージカルなのだ。 

 

 

蘇生どころか、

 

 

まったく清新な佳作として甦った「春のおめざめ」なんざんすヨ!

 

 

 

 

そういえば、のりピー(「碧いうさぎ」)や、 

SMAP(「世界に一つだけの花」) も

手話をしながら一生懸命に歌っていたけど、

んんん、この「春のめざめ」とは比べられん!!

 

 

ブロードウェイでは

 

2003年、

 

「ビッグ・リバー」というミュージカルの再演で 

 

聴者とろうあ者の両方の俳優が

 

手話を使ったミュージカルを見せて話題になった。   

 

実は、今回の「春のめざめ」も、

 

その「ビッグ・リバー」を制作した

 

 Deaf West Theater Production が創作したもの。   

 

 

舞台は19世紀のドイツのとある街。 

主人公は厳格&保守的なカソリック教義の高校に通う男女。 

性にめざめながらも、偽善的大人たちから知識を遮断されて子供達は大混乱。 

悶々とした学校生活を強いられる中で、性の知識がないが故に、 

妊娠中絶、自殺など破滅的な方向へと向かってしまう。  

 

 

 

 

 

今回の「春のめざめ」では8名のろうあ者が出演。  

 

 

 

主な登場人物は・・・  

 

優等生、メルヒオール(聴者)→ 台詞を喋りながら手話でも見せる 

少女、ヴェンドラ(ろうあ者)→ 手話だけ。だがペアの俳優が変わって歌い喋る。 

劣等生、モーリッツ(ろうあ者)→ 同上  

 

 

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その演出に最初は戸惑うが、

徐々に慣れてくると全く違和感なく芝居に入っていける。

 

声が出せない分、

出演者の顔の表情は群を抜いていて、

心の動きや情熱まで伝わってくるのさ。 

 

思春期の爆発的に膨張する内的世界の

内なる心の叫びを表現する際に、

手話による演出による、

かすかなもどかしさは

まさにうってつけなのかも知れない。

 

 

 

 

そうそう、忘れちゃいけない・・

キャストは超イケメン揃い・・・

彼らを見ているだけでも楽しい!!! 

 

 

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ついでも少女達も可愛い・・・  

 

 

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しかし、ここで疑問

 

 

ろうあ者が、お耳が不自由なわけで、音が聞こえない。 

 

 

でも、なぜ間がバッチリ合っている??  

 

 

実は、彼らには秘密サインがあって 

 

動きのタイミングをろうあ者の俳優におくっているのだとか!?  

 

たとえば、鼻をほじくったら、飛び降りるとか・・   

 

 

 

演出を手がけたのは、マイケル・アーデンという人。 

 

何が感動したかって・・・ ろうあ者だから・・って特別扱いしていないところ・・ 

 

舞台上で全く聴者と同等なのだ。 

 

本作が彼の出世作になるこたぁー間違いない!   

 

この再演、初演の演出を超えたとおもうぜよ!

 

 

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本作の魅力・・・ 極めて奇妙、しかし一度見たら脳裏について離れない!

 

練りに練られた脚本は絶品!  

 

ソングライター、ダンカン・シークの楽曲は、 

 

コンテンポラリーなロックで超魅力的な楽曲ばかり。 

 

さすが、グラミー賞受賞シンガー! 

 

珠玉のナンバー揃い!! 

 

 

この再演では、ギター、ベース、ドラム、チェロなど7人でバンド構成。

 

 小規模ながら魂を感じる熱い演奏で聴き応えは十分だ。    

 

この再演は、再演というよりは、もう新作やね。 

 

そんな新鮮な息吹を感じる傑作だ!   

 

 

 

 

 

多感なティネージャーのお子さんをお持ちの貴女! 

 

きっとミュージカルそのものを一緒に楽しめることはもちろんの事、

 

親子の絆がいっそう深まるやも知れませんゾ。 

 

騙されたと思って行ってみそ! 

 

目からウロコぽろぽろ、想い出ボロボロby 内藤やす子   

 

 

1月26日までの限定公演   

 

 

 

トシカプ評:★★★★   

 

 

 

ミュージカルって、ブロードウェイって楽しいだけでなく、         

ほんっとうに役に立つ人生訓がギュっと詰まった素晴らしいものなんですよね! 

 

 

 

Brooks Atkinson Theatre 

256 West 47th Street

New York, New York 10036 

 

 



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October 12, 2015 6:56 PMComment(0)



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