舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
ブロードウェイ・ミュージカルと
ハリウッド映画という組み合わせ。
持ちつ持たれつ、
補いつつ、
ライバルのようでもあり、
でも互いに影響しあう、
言うなれば夫婦のような関係でありまして・・。
と申しますのも、
ネタ切れのブロードウェイが、
題材を求めてヒット映画を舞台化したり、
またその逆も・・・
ドル箱映画が舞台化され、
ミュージカルが大ヒットすると
また舞台版が再度映画化されたり・・・
枚挙にいとまがないよね。
舞台版の映画化で成功をおさめた例として
記憶に新しいのが「レ・ミゼラブル」
おフランスの文豪ユーゴーの名作を
ミュージカルにして大成功を収めた後、
それをミュージカル映画化。
豪華絢爛の俳優陣に目を見張りました!
おヒュー様に
アン・ハサウェイ様
そして、ラッセル・クロー様。
歌は素人レベルだったけどあのエロい低音の響き!
全編口パクなしのライブ録音ってのも
ファンには新鮮な驚きでした。
ナマの舞台もそりゃーすんばらしいですが、
映画版では、見目麗しい俳優人の
接写にウットリしつつ楽しむことができた。
舞台のミュージカルに材をとりつつも、
映画版は映画版として、
独自のエンタメとして立派に成立しておりましたの。
その結果・・・・
日本では「オペラ座の怪人」の興行収入を抜き
ミュージカル映画歴代史上1位に!
これは普段ミュージカル映画などとは縁のない様な
幅広い客層にアピールした結果に違いありません。
で、それに続けとばかりに映画化されたのが・・・
2005年、ジュークボックス系で
初めてトニー賞最高の栄誉、ミュージカル作品賞に輝いた
「ジャージー・ボーイズ」
本ブログでも取り上げました!
https://www.fujisankei.com/toshicappuccino/2013/07/post-19.html
映画監督には、
ハリウッド映画界の巨匠、クリント・イーストウッド様、御年84歳
映画監督としてアカデミー賞も受賞
そんな彼が「ジャージー・ボーイズ」の
メガホンを取るというニュースは偉い話題になったよね・・
が、ちょっと待った!
クリントさん、どちらかというと
西部劇、
スポーツ、
戦争ものの分野が得意だったのでは??
でもでも、
きっとミュージカル映画も挑戦したかったんだよね?
で、アメリカ公開が6月20日・・ だったので、
マンハッタンのどの映画館も上演期間終了。
唯一上演していたのが、マンハッタンから橋を渡った
クイーンズ区キュー・ガーデン地区の小さな映画館
ちょっと黄昏れながら鑑賞してきました。
筋書きは、
舞台版を忠実に。
売れないバンドが、
新メンバーの加入に伴い改名後
発売した「シェリー」が爆発的ヒット。
が、華やかなスポットライトの陰で
仲間割れ、嫉妬、家族との不和などが渦巻く、
ってなバック・ステージもの。
唯一の見どころが・・・
ザ・フォーシーズンズの懐かしの大ヒット曲の数々。
団塊の世代のノスタルジーを鷲掴みやね・・
曲は本当に素晴らしいのだけど・・・
全体的におとなしめ・・
とうか、ぶっちゃけいうと退屈・・
ちょっとウトウト!
クリントさんが華やかなエンタメの世界を
どう表現するかを期待していたのだけど
創造性に乏しく、
どちらかというと計算されたベタな演出にガッカリ。
さらに・・失望したのは・・
ミュージカル版から大抜擢されて
映画でもフランキー・ヴァリを演じた ジョン・ロイド・ヤング。
トニー賞主演男優賞受賞者なのに
主役の貫禄もオーラもなく
銀幕の中での輝きがナーイ。
無名の音楽グループが
アメリカ音楽界を席巻するまでの
波乱に満ちた彼らの人生を
ドラマテックに描いた映画が観たかったのに・・・
蓋をあけてみたら・・・・・
アメリカで貧乏人が成功すると
こんな悲惨な目にあうのよ・・
ってな痛々しい映画にしか見えなかったのだよー。
舞台版ではトニー賞に輝いた本作だが
映画版はアカデミー賞ノミネートさえも無理??
大ヒットしたミュージカル版を超えろ!
とか無理な注文はしません。
せめて、
換骨奪胎(創意を加えて、自分独自の作品とすること)して、
映画版独自の世界観でもって、
エンタメとして造り上げて欲しかったよ。
ハッキリ、
キッパリ言いますゼ。
ザ・ フォーシーズンズの
長ーいミュージックビデオを観たい、
という人以外には、
お勧めしません!
日本公開は9月27日
ブロードウェイ・ミュージカルって、
楽しいだけでなく役に立つ人生訓がギュっと詰まった、
素晴らしいものなんですよね!
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