舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
スシ
エダマーメ
ラーメン・・・
ゴーゴーカレー(笑)
日本発の食文化は太平洋を越えて、
今日もニューヨーカーの胃袋を直撃し続けとります。
例えば・・・
スシ
やがて現地で変容を遂げ、
カリフォルニア・ロールだの
ドラゴン・ロールなんてのが、
総菜屋さんで当たり前のように売られてたり・・・。
で、もうイッチョ・・
そのスシと変わらないほどの人気なのが
キャラオーキ(カラオケ、笑)
10年ほど前までのニューヨークのキャラオーキ屋は
NY在住者の日本人や駐在員ばっかだったけど、
今じゃ、キャラオーキ屋で歌っているのは8割方がアメリカ人。
週末はバーを占拠状態。
行儀よく上手に歌おうとする日本人に対して
アメリカ人は・・・・
音程やリズムなんか二の次。
マイクが壊れるんばかりにがなり立てまくるぅ。
同じカラオケでも、
場所と人が変わると、
楽しみ方も変わってくるんだねー !
いまや、欧米人だけで
商売が成り立つほどに成長した
カラオケビジネス。
ただ歌うだけの娯楽だと思っていたカラオケを
今度は、なんとオフオフでお芝居にしちまったーてんだから、
やっぱアメリカ人は人を食ってるちゅーか、
奇想天外だよねー。
この新種のカラオケ・プレイのタイトルは
「Dead Behind These Eyes」
日本語にすると「脳死」とでもいえばいいのか?
キテレツなタイトル・・・。
会場となるのは、通常の劇場でなく、
イーストビレッジのカビ臭い地下にある
カラオケ・バーの一室。
カラオケ・プレイといえども、
お客さんに、唄を歌うことを強要しない・・
歌好きのあたしゃ、ここで一曲自慢のノドを披露して、
なんて期待してたので、
ショボーン。
本作は男性二人に女性一人の役者が
ブリトニー·スピアーズ、プリンスなどを
カラオケで歌い、踊りながら進行するという、
実験的な芝居なのさ。
本作の脚本は・・
劇作家ジョン・オズボーンの代表作
『怒りを込めて振り返れ』を材にしてるという。
いきなり、1956年のオズボーンの芝居なんて出されてもねー???
と調べてみると・・・
『怒りを込めて振り返れ』は
密室の中の3人の反体制的な若者と階級闘争を描く、
リアリズムの作品で、ロンドンで1956年に初演当時は、
それまでの蝶よ花よの舞台に対する
過激なアンチテーゼとしてヒットしたのだとか・・・。
断片的な歌や踊り、そして流される映像の合間に、
このオズボーンさんによる台詞がちりばめられて・・・
という、シュールな展開。
風変わりのは、これと言って必然性のない台詞を
役者同士でしゃべるのでなく、
観客に向けてしゃべると言う突飛な演出。
時にそれは質問であったり、
単なる独白であったりするんだけど、
それを振られた観客は、
一体どう返したもんか、
または無視すべきなのかも解らず、とぎまぎ・・・
なんか居心地悪ーい雰囲気なの。
このカラオケ・プレイなるものの
イギリス人演出家、キャサリーン・ハミルトンは
若かりしのファラ・フォーセットばりのお美しいお方・・・
観劇後、聞いてみた。
彼女曰く、カラオケルームでは、
誰もが自分の事ばかりにかまけて、
他人が歌っているときは全く無関心だったりする。
そんなカラオケルームでの典型的な様相は、
自分以外の社会や政治に無関心な人達と同じ。
だからカラオケを使い、現代人の空恐ろしい程の、
他者への無関心という、現状を描きたかったと・・・
たかがカラオケ、
されどカラオケ・・・
カラオケから現代病理学的分析を試みるとは・・・
なんかすごーい・・・
既成概念をぶち壊すNYならでは作品じゃーん!
これは、同じ様に掟破りの着想で、
シェークスピアを無言劇にしちゃって、
秘かなブームになっている「スリープ・ノー・モア」に続く
スマッシュヒットとなるか???
と期待したいんだけどー !
10畳ほどのカラオケルームだもの、
超至近距離で役者が演技しているので
熱さはスゴーく伝わって来るのだけど、
無関心な人間の側面を問題提起にするのなら
他の手段もあったろうに・・・
20人も入ったら
満室ってくらいの密室感がスゴくて、
閉所恐怖症の方はアウト!
あたいは、やっぱカラオケは歌うものだと思うのだよ!
あ〜ん、じれった〜い、じれったい〜♪
なので、NYでしか成立しえない、
「私は誰、ここは何処?」的な、
ブッ飛んだ異様空間を
お望みの方以外には、
おススメできないわっ!
公演は、9月20日まで
トシカプ評:★★
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
Sing Sing Karaoke - Avenue A
81 Ave A New York, NY 10009
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