舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
舞台芸術の中でも、やはりミュージカルは歌とか踊りがメイン。
なので、どーしてもきらびやかな手弱女振り(たおやめぶり)なテーマが多いんじゃないかしら?
やっぱ、
花
星
夢
愛〜
。
夜明けのスキャット・・ルルル〜、
みたいんだと、イェイ納得ゥー、みたいな・・・
そんな中、今回はちょっと変わり種。
益荒男(ますらお)振りミュージカル、「ロッキー」よォ〜ん、
んじゃなかった・・・
「ロッキー」だぜえええぇぇ。
なんてね、おーホホホ・・・
「ロッキー」と言えば、ハリウッドの重鎮シルベスター・スタローンの出世作。
シリーズ6まで製作され、再生され尽くされた感の或るショーワなコンテンツ。
誰もが知っている単純明快なストーリーに
あのブラスのチャチャチャーン チャチャチャーン♪ の
テーマソングは怖いもの知らず。
とはいえ、ボクシングがテーマだなんて、
スポーツ音痴な私にとって、ちょっと「?」な部分があったのも事実。
そこいらへんの、
猜疑の混じった私のレポートは
昨年9月にアップされたので、
御覧になってくださいね。
https://www.fujisankei.com/toshicappuccino/2013/09/post-33.html
ドイツのハンブルグで産声をあげ、ポテンヒットを飛ばした後、
満を持して3月13日、ブロードウェイで開幕した「ロッキー」。
私の不安をよそに、ヒット映画におとるとは言え、
ハイリスクな題材を取り上げた野心作の出来映えは、
スカット爽やかコ◯・コーラな高揚感満載のエンタメに
仕上がっておりましたの。 やったネ!
最大の見どころは 終盤20分間のボクシング・マッチ!
文字通り"必殺"のパンチが、うなる超絶バトル!
血生臭いリアルな光景まで見事に繰り広げられ、
手にP、じゃなかった汗握ります!!
そんな格闘が行われる 動く特設リングのアイディアも秀逸!
クライマックスになると、舞台目前の中央の座席に座っている観客を
舞台上に設けられたリングサイト席に移動させたと思ったら、
空席となったそこへ、
舞台上にあったリングをそのままドッコイショって移動させ、
観客が四方を囲む形で ロッキーとアポロの死闘が楽しめるのさー。
天井にはリングを照らす照明。
リングの両脇には電光掲示板。
舞台正面の上には二人の解説者のボックス席まで。
まさに、ブロードウェイどころか、
いきなりマジソンスクエアガーデンの
ボクシングマッチに放り込まれたみたいな感じになっちゃう。
この斬新な演出をしたのがアレックス・ティンバーズ。
オフ・ミュージカル『ヒア・ライズ・ラブ』で
観客を動かす演出が話題となり、
今、ブロードウェイで一番期待されている新進演出家なのだー!
ラストの15ラウンドの迫真の死闘での流血シーンやノックダウンをはじめ、
ラウンドガールがプラカードをもってリングに登場するタイミングも完璧。
興奮の嵐を楽しめるのさ。
全てがコリオグラフ(振り付け)されたシーンなわけだが、
まープロレスリングだって
かなりショーアップされているという噂だしねぇー。 と、
いきなりクライマックスを紹介してしまったが・・・・
ストーリーは皆さんよーくご存知と思いますが、
お若い平成生まれの方々のために簡単に・・・。
噛ませ犬の3流ボクサー、ロッキーが、アドリアンと出会ったことで俄然発奮。
短期間の猛特訓で試合へと臨む・・・
で、演出家アレックス・ティンバーズが、
冒頭からクライマックスまでどんな演出をしたかというと・・
映画の名シーン
例えば・・・
◎生卵の一気飲み
◎牛肉の塊をサウンドバッグ代わりにするシーン
◎フィラデルフィアミュージアムの前のランニングシーン
ふむふむ、映画版がお好きな方の♡を鷲掴み!
しかーし、
。
.
.
全体的な演出は超控えめの薄味。
淡々とした芝居が続くのさ・・
おそらく、
クライマックスのボクシングシーンを最大限に強調し、
爆発させるための演出家の計算では?
そんな演出だから、逆に、役者の力量がすごーく問われたわけさ・・
ロッキーの大役を仰せつかったのは、舞台俳優、アンディ・カール。
初舞台から13年目に掴んだ「ロッキー」主演の大抜擢! おめでとう!!
映画版の筋肉おバカキャラを、
懸命になぞってはいるのだが、
今ひとつ説得力に欠ける・・・。
観客をグイグイ引っ張って行けないのだ・・残念ながら。
ストレートに言うと、彼にはロッキー役は無理だったのかも?
でも、それは配役したプロデューサー(キャスティング会社)に
見る目がなかったってことよ!彼が悪いんじゃない!!
音楽を手掛けたのは、ベテラン作曲家。
しかし、あまりにもキョウレツな「ロッキー」のテーマソングや、
サバイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」も演奏される中で、
本作書き下ろしの楽曲その存在は希薄。
というか、私は全く記憶に残らなかったね。
客層は、通常のブロードウェイでは見かけない 体育会系の方々が目立ちます。
ちなみに、私の周りには、 頭を剃りあげたプロレスラー風の外人さんが数人。
きっとボクシングの疑似体験にいらっしゃったのね!?
今シーズン、話題を独占した「ロッキー」。
チケット売上げは新作「アラジン」や「イフ・ゼン」と比べるとやや劣勢。
だけんど、ボクシング観戦している錯覚にとらわれるほどの演出は超見物だよー!
前述のとおり、観劇後の爽快感はなかなかのもの。 むしゃくしゃした時にはオススメよ。
日本へのツアーの濃厚だが、まずはブロードウェイでオリジナルをみることをお薦め!
で、もしも、日本人キャストによる翻訳上演をやるとしたら・・・
日本ではぜひ
。
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TOKIOの長瀬智也様
。
筋トレ頑張ってもらって、
新たなアジア版ロッキー像を造り上げていただきたいもんです。
ミュージカルって、ブロードウェイって楽しいだけでなく、
ほんっとうに役に立つ人生訓がギュっと詰まった 素晴らしいものなんですよね!
トシカプ評:★★★
Winter Garden Theatre
1634 Broadway
New York, NY 10019
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