舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
つい数週間前に「ヘドウィグ」という女装が主人公の舞台を、
得意げに述べさせて頂き、
その舌の根もマニキュアも乾かぬというのに、
今度は女装癖のおっさん達の出てくる芝居
「カサ・ヴァレンティーナ」のご紹介でございます。
もーそんなもんばっか・・・・なんて言わんでねぇー。
別に、ソッチネタをゴリ推しする積もりは全くないんだけど・・・
実際ブロードウェイの舞台は性的倒錯テーマが余程お好きなようでして
ただし、
この「カサ・ヴァレンティーナ」に出てくる女装愛好者たちは、
れっきとした異性愛者。
つまり
女の格好や化粧をしつつも、
肉欲ベクトルは異性である女性に向けられてるっつーんだから、
海千山千の私ですら、人生いろいろ、スケベもいろいろ♪
なんて感慨に浸っちゃうワケなのよー。
この、どっちかつーとマイナー芝居の注目点はと言うと、
何と言っても、
脚本のハーヴェイ・ファイアスタインおじさん!
ウディ・アレンが、
なんとなく
日向のマンハッタン・アップタウン・ジューイッシュ代表選手だとしたら、
ファイアスタインは、
影のブルックリン出身の
アングラ・ジューイッシュおネエ様とでも申しましょうか?
これまでにも実にエグーい問題作を発表し続けておられる、
知る人ぞ知る御方なのでごじゃります。
では、このハーヴェイさんの足跡を辿ってみましょう・・・
◎自伝的要素の濃い「トーチソング・トリロジー」を脚本&主演でトニー賞受賞。 ,
オフ・ブロードウェイ → オン・ブロードウェイ → ウエストエンド → 映画
◎脚本を担当した、「ラ・カージュ・オ・フォール」はあとに映画化され、パート3まで作られた。,
ブロードウェイ → ウエストエンド
◎ヒット映画のミュージカル版の脚本を担当した「キンキー・ブーツ」,
ブロードウェイで絶賛上演中!
ねー?
演劇&映画ツウのあーたなら、グッとくるよな経歴なのよ!
ストーリーは
1960年代のアメリカ郊外、
ジョージ(女装時の名前はヴァレンティーナ)とその妻リタの家に、
全米から女性愛好者が集まり、
女装でパーティを楽しんでいたのだが・・ ・
60年代と言えば、
ゲイでなくても女装好きなんてゼッタイに口に出せなかった時代。
社会に生き抜くために、自分の女装癖をひた隠し。
保守的な男を演じていたのよね・・・
演出は・・・
ブロードウェイの売れっ子演出家のひとり、ジョー・マンテロ様。
爆発的なヒットとなりロングランを続けている
ミュージカル「ウィキッド」は彼の代表作!
本作では、サラリーマンや判事の保守的なおっさんたちが、
女装することで至福と時を過ごしている様子が実に良く表されているんだなぁー。
見ているこっちも自然にチャンチャンブギィな気分になっちまったよー。
見どころ・・・
◎今ニッポンの芸能界で脚光を浴びてる、
いわゆる女装好きゲイの方々に比べると
ゴクフツーの男性の女装姿はある意味光景ながら新鮮。
一口に女装と言っても、ゲイの女装家とは、全然違うの! 服やメイクもナンカ独特。
◎強者のキャスト陣
特に7名の男性陣の変身ぶりはあっぱれ!
それぞれが、庶民的オバちゃんタイプから、有閑マダム風まで
女装前の表の顔を引きずった様な個性的変貌を遂げるんだー。
と、題材はユニークなのだけれど・・・
芝居の後半戦、トランスベスタイトと言う倒錯の心理学的考察やら、
劇中で起きる脅迫事件についての説明が延々と続くのはちとしんどい。
もちっと役者さん達の、台詞以外の表現力や、お客さん達の、
言外の物語を汲み取る能力を信用したって良いんじゃない? って思っちゃった。
ファイアスタインさんの脚本、ちょっと肩に力はいり過ぎじゃないかぁー!?
もし、この女性癖の男性たちを日本人がヤルとすると・・・
その一人に是非
板東英二様を!
どこにでも居そうな フツーなおじ様ならではの、
味わい深ーい女装になりそう・・・
最近芸能界に復帰されたそうで・・・
ここで一発、問題作にチャレンジされて、
大変身を遂げるキッカケになるかも。
大好きなゆで卵の殻を剥く様に!
本作は6月29日で閉幕
ブロードウェイ・ミュージカルって楽しいだけでなく、
役に立つ人生訓がギュっと詰まった、素晴らしいものなんですよね!
トシカプ評:★★★
Samuel J. Friedman Theatre
261 West 47th Street
New York, NY 10036
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