舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
既にご存知の方もおられるかと思いますが、4月29日に
第68回トニー賞ノミネート作品が発表されました!
そん中の、ミュージカル・リバイバル賞候補作品で
居並ぶ有名作品に混じっていたのが今回ご紹介する
「ヴァイオレット」
いわゆる、穴馬、ダークホースちゅーヤツですねー。
なんてったって・・・
同じ枠内に世界中から大注目の「レ・ミゼラブル」や、
今、ブロードウェイでいっちゃんチケット入手が困難を極める「ヘドウッグ」
なんかがひしめき合っているのですから、
ショーワっ子のアタシなんざ思わず、
走れ〜走れ〜コータロォー と口ずさんじゃったりして・・・笑。
ヴァイオレット? なんじゃ、ソリャ?
ミュージカルが3度の飯より好き! ってな人は知っているだろうけど・・
普通の人は知らんわなーー。
そんなコアなミュージカルが
リバイバル賞候補作のノミネートされたわけさ。
その「ヴァイオレット」が初演されたのは16年のオフ・ブロードウェイ。
当時はそんなに大きな話題にもならず、
そのまま静かに眠ってらっしゃったのじゃが
昨年夏に行われた一日限定のコンサート形式のショーに
本作が引っ張り出され、再び脚光を浴びたことが
ブロードウェイでの再演に繋がったとさ。
ストーリーは
父が使っていた斧の刃が飛び
少女ヴァイオレットに直撃。
顔に大きな傷を負ってしまう。
楳図かずお先生ちっくな、陰惨な アクシデントが・・・
きゃー、顔は女の命なのに残酷スギちゃん。
心に深い傷を負ってひきこもりになっていた彼女だが、
顔の傷をヒーリングで治せるという神父さんいることを知った彼女は、
自分の傷を治してもらおうと神父さんに会うことを決心。
乗車したバスの中で二人の兵隊と出会い・・・
主演は、トニー賞主演女優賞2冠のサットン・フォスター様。
ハリウッドスターのようなスターオーラもない地味ーなルックス。
(ファンの方ごめんよー)
たぶん、NYの地下鉄に乗ってても彼女だってわかる人はいないだろう!?
そんな彼女なのだが、
歌わせても
踊らせても
笑いの間の良さも
すべて100点満点。
ブロードウェイの中でトップクラスのマルチタレント。
まさに、ミュージカルのためにこの世に生を受けたようなお方なのよー。
しかし、
今回の彼女の役所は、顔を心に傷を負うという複雑で
濡れ場もあるディープな女性の役。
果たして、
これまで利発で明るい役しか演じて来なかった彼女に出来るの!?
と心配しちゃったよ。
が、しかーし
見せてくれました!
ヒロインの繊細な心のひだを演じ歌っちゃうんだもんねー!
トニー賞女優の威厳を守ったね、彼女は・・
見どころは・・
◎粒ぞろいのキャスト
後方舞台上にオーケストラ。
舞台装置は必要最小限。
観客をビジュアルで誤摩化さない分、
役者としての力量が凄い重要になってくるんだねぇー。
役者さんの本作への力の熱の入れようがビンビン伝わって来る!
きっと出演者全員が本作を凄ーく愛しているんだろうなー!
◎音楽
テンポの速いホンキートンキー・ロック、ブルース、カントリー音楽、
ゴスペルなどバラエティに富んだ曲満載。
特にしびれたのはフリック役のジョシュワ・ヘンリーが歌った「LET IT SING」。
観劇後、頭の中でずっと回転していたくらいだよー。
リバイバル賞候補作3作品の中で、
プロの評論家にいっちゃん褒められている「ヴァイオレット」。
口コミで評判が広がっているようだが、
チケットも売上げはまだ繋がっていない模様。
舞台芸術と観点でいえば、
話題性抜群の本命「ヘドウッグ」と
超大作「レ・ミゼラブル」を押さえ込み、
「ヴァイオレット」のどんでん返しとなりそうなのだけど・・・
走れ〜走れ〜♫(以下略)
もしもコレを日本人がやるとしたら
松たかこ様
『アナと雪の女王』主題歌「Let It Go~ありのままで~」の熱唱には腰抜かしちゃったよー!
乗りに乗ってる彼女に是非出演交渉を!
シアタークリエさん、宜しく御願いしますよ!
「ヴァイオレット」は現在のところ8月10日までの限定公演
ブロードウェイ・ミュージカルって楽しいだけでなく、
役に立つ人生訓がギュっと詰まった、素晴らしいものなんですよね!
トシカプ評:★★★★
American Airlines Theatre
227 West 42nd Street
New York, NY 10036
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