舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
前回のブログでご紹介したトニー賞演劇部門、
主演女優賞の栄冠を勝ち取った、
オードラ・マクドナルド様
これで、
なななんと、6回目のトニー賞受賞。
それも歴代最多。
んでもって、
まだ43歳の若さだってんだから、
「オードラって・・・恐ろしい子」だよー。
オードラの何がスゴいかって・・・
彼女の場合、芝居、ミュージカルを問わず、
オール・ラウンド・プレイヤー。
ちゃんとお芝居が出来て、
しかも抜群の歌唱力を兼ね備えた、
なんて俳優はそうはいませんゾ!
誰もが認める美しいソプラノはもちろん、
オペラを歌わせても超一流だから凄―い!
おそらく今のブロードウェイで、彼女の右に出るものはいない?
つーことは、
ミュージカル界で世界一、つーことじゃーん!!!
まだそれほど日本での知名度無いけど、
「オードラ・マクドナルド様。」の名前を
ぜひ皆さんも、お帳面に書き留めておおきになってェ~。
で、今回彼女が賞を取った作品が・・
天才ジャズシンガー、ビリーホリディの音楽劇
「レディ・ディ」
オードラ・マクドナルドが扮するのはもちろん、ビリー・ホリディ。
ホリディと言やー、
独特な声と歌唱法で、
ジャズ界に多大な貢献をしたと同時に、
その歌手しての成功と反比例するような、
人種差別、
娼婦経験、
麻薬とアルコール中毒、
嗜虐的な数々の男たちからの人権侵害、などなど、
まるで
不幸の総合商社
のような壮絶な人生をいきた薄幸のジャズ・シンガー。
彼女の歌声は、魂の叫びといわれ、
世界3代ジャスボーカルの一人といわれてる、
まさにレジェンド。
本作は1956年、ビリー・ホリディが亡くなる数ヶ月前に
最後に歌ったEmerson's Bar and Grillを再現。
破滅的人生を駆け抜けた、悲劇のジャズ・ボーカリストを、
正統派のエンタテナーとして成功を邁進する、
ほとんど伝説・イン・メーキングと言ってもよいような、
オードラ様が演じるっつーんだから、
なんかすんごいショーじゃなーい。
心身ともにボロ雑巾のようになって、
44歳で亡くなったホリディを
記録破りの円熟43歳のオードラ様にやらせちゃえー、
ってプロデューサーの鼻息の荒さも感じちゃう。
同じく伝説歌手キャロル・キングを
無名のジェシー・ミューラー様を大抜擢して、
まさに「スター誕生」を現出させるという、
別のアプローチで攻めた「ビューティフル」なんかを見ると、
ホント配役の妙味ってのに感じ入ります。
見どころは、
もちろん、オードラ・マクドナルドが歌うビリー・ホリディのナンバー
GOD BLESS FOR THE CHILD
STRANGE FRUITS
WHAT A LITTLE MOON LIGHT CAN BE
などなどジャズファンなら知らない人はいないヒット曲揃い
また、その歌唱力が凄いんだぁー!
歌い方、
声のトーンなど
オードラ・マクドナルド自身のスタイルをすべて封印して
ビリー・ホリディになりきる彼女の演技力は神業。
ホリディさんの歌唱をただただ敷き写してるだけじゃ、
モノマネ歌合戦
になっちゃうけれど、
オードラさん自身が、ジャズ・イタコになって、
ホリディさんを降臨させることにも成功してる?
また、歌だけでなく、
酒と麻薬に溺れた痛々しい人生を歌の間に語るトーク
しゃべらせてもビリー・.ホリディなんだな、コレが!
でもまー、 バイオグラフィー音楽劇はありがちなパターンだし、
曲間に、スキャンダラスなプライベートをガンガン話していますが、
どっちかつーと添え物的な感じ。
ぶっちゃけ、劇的ストーリー・ラインや場面をメインに期待して行くと・・
ガッカリしちゃうかも・・・?
あくまでレジェンド・オン・レジェンドの醸す、
ジャズ全盛期のムードに浸りにいくという前提で、お楽しみくださーい。
特に、ジャズが好きって方や、大人のショーを堪能したい方には向いてるかも?!
オードラ様の受賞も相まって、
話題性もよいし、観客の評判は上々。
客の入りも・・
上演は8月31日まで延長されたので、
真夏の夜のジャズタイムにぜひ!
さて、「レディ・ディ」の日本版をやるとしたら、
ビリーはぜひ・・・・
大浦みずき様
に願いしたかった。
彼女の壮絶な人生と歌唱力で、
ナデシコ系レディ・ディの世界を
再現して欲しいかったぁー。
ブロードウェイ・ミュージカルって楽しいだけでなく、
役に立つ人生訓がギュっと詰まった、素晴らしいものなんですよね!
トシカプ評:★★★
Circle in the Square Theatre
235 W. 50th Street New York, NY
10019
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