舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
ハッピバースデー・テゥーミィー♪
数日後に、伝説のキャバレー・バースデー・ショーを控えて、
また一つ大人への階段を昇りながら、
そんな中でもブロードウェイ・ショーのご紹介に勤しむ、このあたくし。
健気よのォ〜
ブログでは、なかなかそこまでは、ってな過激な発言・暴言満載。
おまけに歌って踊って奮闘努力のナマのトシカプを観に、
ぜひお出でくださいねー。
7月8日(火)午後7時開演! 場所はDUPLEX CABARET THEATERよー。
残席わずかだから、ご予約をお忘れなく!
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さて、以前にも書きましたが・・
舞台芸術を評論する際、気をつけていることは・・・
公平に
分かり易く
と常時、心がけているわけでごじゃります。
が・・・・
私とてヒトの子、
敢えてリスク覚悟で
作り手こだわりの
チャレンジ精神を感じさせる、
オリジナリティに溢れた作品を見ちゃうと、
どーしたって
依怙贔屓(えこひいき)
しちゃう傾向は否めないさー。
マーケティングにより最大公約数的に
今の観客にウケる要素をてんこ盛りにして、
見る人のツボをこれでもかとくすぐってこられりゃ、
やっぱ気持ちもいいワケでして。
それなりの安定した心地よさもある。
所詮ショー・ビジネス(お商売)なわけだし。
お客様の求めるものを提供する、
というのはまっとうなアプローチと言わざるを得ない。
でもね、でもなのヨ。
毎年60本近くの舞台を20年近く見続けて来て、
そんな擦れっ枯らしの私ですら、
時たま観客席から転げ落ちそうになったり、
目からウロコがハラハラはがれ落ちて、
思わずひざ頭を平手でペーンと打って、
唸っちゃうような作品に出っくわすこともある訳で・・・
「そー来たか!」とね・・・。
そこで今回は、このトシカプ・バースデー・ショーに負けず劣らぬ野心作、
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ミュージカル「HOLLER IF YA HEAR ME」
ラップやヒップホップファンなら、
そのタイトルだけで、ピーンとこちこちになっちゃう人もいるのでは?
でも、ほとんどの方が、
えーーーーラップゥ〜?
ヒップ・ホップゥ〜??
イヤ〜ン、なんかうるさそー。
ってなっちゃうんじゃない?
「HOLLER IF YA HEAR ME」とは、
伝説のヒップホップMCの2パック(2Pac)の楽曲名をタイトルにした
ジュークボックス・ミュージカルなのさー!
2パックといえば、
ラスベガスでの東西ラップ抗争に巻き込まれ
銃弾に倒れたヒップ・ホップ・アーティスト。
没年たった25歳だとさ・・
スゴーいカッコいい黒人さんだったのだけど・・・
本作のどの辺に「攻めてる〜」って感じられるかと言うと、
90年代のラップをミュージカル化したところ・・
普通、ジュークボックス系といえば、昭和の世代の懐メロばかりじゃない!
だって、ブロードウェイのお客様の大半が、
ン百ドルで数時間のお楽しみにやってくる、
時間的金銭的に余裕綽々の、
所謂中高年白人の方々なのよ。
そんな方々にヒップ・ホップぶつけてきた所がスゴいじゃない?
コレって・・・
歌舞伎ファンの方に、
いきなり
「じゃ、きゃりーぱみゅぱみゅ、どーぞー♪」
。
みたいなもんよー、www
また、
「ジャージー・ボーイズ」や
「ビューティフル」のような
伝記ミュージカルでなく
2パックのラップ音楽を使い、
脚本は完全オリジナル。
まー言ってみれば、
ABBAのミュージカル「マンマ・ミーア!」と
同じパターンで作られてるわけや。
物語は・・・
舞台はアメリカの中西部
麻薬密売人だったジョンは殺人を犯し服役。
6年間のお勤めを終えてシャバに出て来る。
堅気として生きようと、昔からの友人との付き合いをすべて断ち切り、
時給8ドルの自動車修理工となるのだが、
幼馴染のヴェルテュから、麻薬密売の仕事に誘れたり、
ヴェルテュの弟を殺したギャングへの復讐に誘われたり,,
貧困、麻薬、殺人などが蔓延る劣悪な生活環境から なかなか抜出せない・・・
見どころ
◎2パックのラップ音楽
ヒップホップ、ラップ系音楽にそれほど興味が無かった私でも
体にビンビン伝わるリズム。
メロディラインも、えらい洗練されとうよ・・・。
ラップなんて不良青年の音楽だーなんて食わず嫌いの方も、
気がついたら思わず全身でリズム刻んじゃったりすること請け合いヨ。
その音楽をアレンジしたのが、
ダリル・ウォーターズ(「アフター・ミッドナイト」、「ノイズ&ファンク」
黒人音楽をアレンジさせたら天下一品
◎21世紀版「ウエストサイド物語」とも言える脚本とストリート・ダンス。
派手な動きのないシンプルな振付ながら、男っぽく、超スタイリッシュ
振付は「ウィキッド」のウェイン・シレント様
◎粒ぞろいのキャスト
特に釘つけになったのは、ジョシュア・ブーン(右手の坊主くん)。
スターオーラは半端なく、ルックス、演技力も申し分ないね。
難を言えば、 脚本がちとベタ。
貧困で麻薬に走り希望のない黒人しか出てこないって、
いくらなんでも常套的過ぎやしませんかァ〜?
また、英語が苦手な人にこのラップが理解出来るか?
私の回りのネイティブ米国人もラップ英語の聴き取りは難しいと言っていた。
なので、観劇前には2パックさんの代表曲の訳詞にざっと目を通しておくと、楽しさ倍増ヨ!
作り手の魂を感じるとてもクリエイティブな作品だとは思うのよ。
でもね、お商売という観点からちょっと心配いちゃうのよねー
ラップのファン=若年層な訳で、どこまで不特定多数の 客層に浸透させるのか?
どちらかというとオフ向きかも知れないと思うの。
たとえば、ロック・オペラ「RENT」のように、先ずはオフで話題を集めて、
おきびを焚く様に、じーっくりとその良さを浸透させて、
話題を作ってから社会現象として、満を持して注目されオンに進出していれば、
また違った展開になっていたのに・・
21世紀といえども、黒人系のミュージカルの集客は厳しいのが現実。
本作がどこまで踏ん張れるか???
NYはブロンクスで誕生したラップ音楽を、
他でもない当地NYで、ミュージカルという形で、
そのタイトで都会的な洗練の粋を堪能出来るたんて、ある意味とーっても贅沢!
興味のある方は劇場にお急ぎになるのがよろしくってよ!
もし、これを日本人がやるとしたら・・・・
DA PUMPの一茶様
地方のイオンモールで営業で回っている場合じゃないぜ。
ミュージカルに進出してEXILEを見返してやれーっ!
ブロードウェイ・ミュージカルって楽しいだけでなく、
役に立つ人生訓がギュっと詰まった、素晴らしいものなんですよね!
トシカプ評:★★★
Palace Theatre
1564 Broadway
New York, NY 10036
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