舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
♪ いばぼ聴こえる、あのォ〜おフクロの声・・・♪
子供の頃、 いつもハカタの母に言われていたこと
1位、早く寝らな!
2位、テレビば消しんしゃい!
3位、人ば見かけで判断したらいかんと!
その3つを幼い私に繰り返し繰り返し諭し続けた母。
それにしても、なぜ母が「人ばみかけで判断したらいかん」
と口うるさく言っていたのか全く定かじゃないが、
それがン十年も後のニューヨークに住む今、
凄く役に立っている事に驚かされる。
♪ 思えば遠くェ来たァもんだ〜・・・♪
(何故か武田鉄っちゃんで攻め続ける今日のあたくすぃ・・・)
言わずと知れた人種のるつぼのココは
人種によって扱いが違うことも多々。
人によっては、そういった発言を嫌悪する人もいるが
差別される側にとったら、黙ってはいられないのさ。
まー、私が差別された経験は置いといて、
911のアメリカ同時多発テロ以後
アラブ系の人々へ向けられた差別や偏見が大きい。
そして折しも、新年早々、
おとそ気分を一気に覚醒させた、凄惨なパリのテロ。
そんなシリアスな社会問題を映画や演劇を通して
発信し続けているのがアヤド・アフタル氏
その最新作が
「DISGRACED」邦題『侮辱された者』
2012年にシカゴで初演、
その後、NYのオフ・ブロードウェイでも
上演され 翌年にピュリッアー賞を受賞。
尻上がりに盛り上がって来ている、硬派のドラマなのだ。
そして、今回、演劇人の夢舞台である
ブロードウェイでの上演が決定したのさ!
ストーリーは・・
舞台はNYアッパー・イーストサイドの高級アパート
パキスタン系アメリカ人の弁護士、
アミールと 妻である白人の芸術家エミリーは、
勝ち組として、なに不自由ない生活をおくっていた。
しかし、ある日、白人を夫に持つ、
アミールの黒人女性の同僚夫婦を
ディナーパーティに招待したとき、
お酒の勢いもあり 4人は次第に本音トークへと・・・
ついにはアメリカに蔓延るイスラム系人種への
偏見があぶり出されて行き・・・・・・
見どころは・・・
◎粒ぞろいのキャストの中でキラリは
主人公アミールに扮したのはハリー・ディロン
見た目はまさにアラブ系の彼だけれど
ちゃきちゃきのカリフォルニア生まれのアメリカ人俳優。
アメリカ人とパキスタン人のアイデンティティの狭間で
もがき悩み苦しむ主人公の大熱演!
浮気した妻を殴るシーンも息を呑んだぁー!
夫婦、友人 人は何を信じれば・・ といった普遍的なテーマ。
そして、台頭するイスラム系のテロリズムという
ホット・トピックを扱いつつ、
宗教問題や人種問題に掛かる問題提起を、
ムダのないクレシェンドの効いた
キンバリー・シニアの演出は
観客に投げかける事に成功しているが、
あまりに、テーマを追求しすぎたためか
無理に4人の関係を破滅へと
導く演出が過剰に感じられる部分もなきにしもあらず・・
ここで私事ではあるが、
昨年の感謝祭パーティでの出来事。
毎年招待されている白人ご夫婦のお宅で、
酔った私は、つい人種の話をしてしまい、
そのお宅の奥様を泣かせてしまうという失態。
よく言われる様にアメリカ人とのパーティで、
人種問題、
政治問題、
宗教問題
に繋がる 言動は慎む!
百戦錬磨で、
地雷を踏み分ける俊敏さ、
または
いざ踏んでしまった時には、
それをものともしない強靭な論客以外は、
深入りしないのが鉄則だ。
アメリカ生活も約20年になろうとしているが、
「和を持って尊しと成す」日本で育ったからか
漠然と日本人している私には
奥深ーい闇を覗き込む様な、
分かりづらい部分も感じてしまう。
生まれた土地と育った土地の狭間で
どういうアイデンティティを持ち得るか、
という事は 何処の国にいても
同じことは起こりえるということなのだろう。
日本人の私からすると、
欠点や悪いところをわざとさらけ出す
ニューヨーカーのあけっぴろげな議論展開を
タイトなお芝居で楽しむ。
なんてココとロンドン位でしか出来ない、
ある意味とーっても贅沢なお楽しみ!
生まれた国と育った国が違う方に
特におススメのお芝居だ。
公演は3月1日まで。
さて、本作を日本で翻訳上演するのならば・・ この人しかいない・・・
ヒラインド・ケン
平井 堅に酷似した自称インド人のお方
彼のエスニックな雰囲気は、本作の役にどんぴしゃり!
芝居の世界で新しい分野を拡げてみてはいかが?
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★★
Lyceum Theatre
149 West 45th Street
New York, New York 10036
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