舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
まずは、映画のお話から。
私にとってサスペンス映画の傑作と言えば・・・
「危険な情事」
ストーカーという言葉さえ
未だ使われなかった80年代、
究極のストーカー的恐怖を描いて、
そりゃーもー、世間に衝撃を与えた作品でした!
石田純一さまじゃないけど
不倫は文化どころか、
こげん恐ろしか
オナゴにおうたら、
えりゃーこったい!
と脛に傷をもつ(秘密を持った)
殿方達を震え上がらせたものでしたー!
そして・・・
この映画の
成功の鍵を握っていたのが
不気味なストーカー女を演じ
圧倒的な存在感を示した
グレン・クロース
その怪演ぶりにおののき、私はそれ以来、彼女の大ファン!
で、今回、彼女が久々に
ブロードウェイにカムバック! イェーイ!!
その作品が、再演モノの芝居
「デリケート・バランス」
戯曲を手掛けたのは
アメリカ演劇界の重鎮、エドワード・オルビー。
代表作は、『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』
石野真子のデビュー曲
「狼なんか怖くない」とは
全く関係ありません、念のため。
初演は1966年。
同年、マスコミ関係者が選ぶ
ピュリッツァー演劇賞を受賞。
1973年には
名女優キャサリーン・ヘップバーン主演で映画化も、
舞台版は今回の再演で2度目。
まず、劇場に入るなり、
目に飛び込んで来るのは
豪華なリビングルーム。
細部に至るまで
作り込まれたセットの完璧さだけで、
観客は劇中に放り込まれるのよー。
ストーリーは・・・・
初老の夫婦トビアスとアグネスが
暮らすニューヨーク郊外の豪邸。
そこにご近所の友人夫婦が訪問。
厚かましくも突然、その家に住み始めると言い出し、
娘が使っていた部屋を使い始める。
そんな時、結婚した娘が突然実家に帰って来たために・・・
アグネス役にグレン・クロース
旦那のトビアス役にジョン・リスゴー・・
この有名実力派スター2人の舞台は
まー言ってみれば、
演劇界の夢の競演。
もちろん開幕前から人気沸騰!
開幕当初のチケット入手は
困難を極めたほど。
。
見どころ・・・・
◎素材、役者・・・もちろん文句なし。
グレン・クロースとジョン・リスゴーを
支える脇役も存在感タップリ!
特に、近隣住人の妻エドナを演じた
クレア・ヒギンズ。
面の皮が厚い図々しい
中年女の役作りはピカイチ!
グレン・クロースを
完全に喰ってしまうほど。
物語が進むにつれ、
ヒギンズの出番を待ちわびたほどなのさ・・・
いや、 ググったら、彼女、
映画や舞台で活躍する名脇役。
◎舞台装置、衣装
完璧! 手落ちなし・・
っていえるほど完成度高し。
装置も衣装も、
素封家の老夫婦に使い込まれたような逸品ぞろい。
まるで、
Architectual Digestのページを切り取ったかの様。
さて肝心要の演出も・・
と言いたかったのだけど、
今回のパム・マッキノン
代表作「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」
「クライボーン・パーク」)
の演出はどうも説明的。
グレン・クロースとジョン・リスゴーの両巨頭の出演を
十分に行かせないまま 物語が淡々と進むだけ・・・
ちと眠気がなぁー。
これだけの芸達者を集めた割には、
至高の舞台ならではの
魔法の火花を
散らせるには至らなかったのは、勿体無い!
そんなわけで、チケット売上げは徐々に降下
TKTSのチケット半額売り場でも入手可能なのさ。
限定公演は2月22日まで。
佳作とまでは言えないけれど、
それでも主演2人の滅多にない生共演を
見たいという方はお急ぎになって。
さーてもし、本作を我らがニッポンで翻訳上演するとしたら・・・
片平なぎさ 船越英一郎 のコンビ
二時間ドラマ女王とサスペンスドラマの帝王を封印し
エドワード・オルビーの世界で倦怠期を向かえた
初老夫婦が何気ない日常的心理の機微を見せて欲しい。
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★★
Golden Theatre
252 West 45th Street
New York, New York 10036
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