舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
暦の上じゃ〜
立春の豆まきも済んだちゅーのに、
ニューヨークじゃー
まだまだマイナス気温続き、
おまけに北風も強くて、
まるで冷凍庫の中で
扇風機にあてっているよう・・
なので、本日は
つくねなべ並のホットな情報で
あったか〜くして差し上げてよ〜♥️
さて、
ブロードウェイの新作の開幕は
10月から12月の秋冬に集中。
これは夏の時期、
エンタメ界を牛耳るハイソな方々が
避暑地へ出かけちゃうから?
そのため、彼らがNYに戻る秋が、
第一弾の開幕ラッシュ!?
そして、
寒さも一段落し、
賞レースに有利だと言われる
トニー賞ノミネート発表前の
3月から4月の春が
第二弾の開幕ラッシュとなるわけさ。
せっかく汗水流して
一所懸命作った作品、
トニー賞審査員の
記憶に残りやすいタイミングで、
開幕させたいってのは、
そりゃー人情ってもんでしょ。
で、その逆、
プロデューサーが避けるのは1月と2月。
感謝祭や降誕祭のお祭り気分も過ぎて、
ニューヨークがただただ寒いだけの
灰色の街になっちまう季節。
厳寒や積雪が引き金となって
観客が激減するこの時期は、
閉幕を余儀なくされる作品も多々なのだ。
だから・・・
チケットを1枚買えば、
もれなくもう一枚プレゼントと、
金銀パールプレゼント並の
超お得なプロモーションを
しかけたりなど、
なりふり構わぬ
安売り合戦を展開するのさ。
雨にも風にも負けずな
コアな観劇ファンの
あーたにとっちゃ
逆に狙い目とも言えるわねー。
今回は、そんな最悪な1月に開幕してもうた
新作ミュージカルをご紹介・・・
「ハネムーン・イン・べガス」
本題に行く前にちょこっと今シーズンの
新作ミュージカルの惨憺たる興行成績をチェーック・・・
◎トップを切って開幕した 新作ミュージカル
「Holler If Ya Hear Me」2014年7月20日閉幕
◎スティングの超大型ミュージカル
「ザ・ラスト・シップ」2015年1月24日閉幕
◎演劇ファン期待の再演ミュージカル
「サイド・ショウ」2015年1月4日閉幕
◎上演中とはいえ、再演ミュージカル
「オン・ザ・タウン」も首の薄皮一枚状態
きびしーいっ、(古っ・・財津一郎風)
果たして「ハネムーン・イン・べガス」は、
氷のように冷え切ったニューヨーカーを
温めてくれる 傑作ミュージカルになるのか⁈
本作は1992年の同名映画の焼き直し。
映画・舞台版とも脚本家は同じ。
映画版では主人公ジャックにニコラス・ケイジ、
相手役にサラ・ジェシカパーカーを配し、
興行的にはポテンヒット。
舞台版はその物語をほぼそのまま脚本化!
ストーリーは・・・
結婚適齢期のジャックは
長年チャーミングな恋人ベツィとつき合っている。
がしかし、「結婚だけは絶対にするな」
という亡き母の遺言に縛れ
ベッツィとの結婚に踏み切れずにいる。
ある日、ついに結婚を決意したジャックは
彼女と一路ラスベガスへ。
そこにはジャックの恋仇となる
カジノ界の大物詐欺師トニーが
二人を待ち構えていたのさ・・・
見どころ・・・
◎能天気なドタバタ劇
ここ最近、暗め重めの芝居やミュージカルばかり
しかも、世間じゃ気が滅入る嫌なニュースも・・・
本作はそんな凹みを吹き飛ばしてくれる
歌って笑って踊って180分。
特に2幕はナンセンスシーン満載
カメハメハ大王の像が歌に始まり
数十人のエルビス・プレスリーの
モノマネ芸人を絡めたりと、
爆笑に次ぐ爆笑!
◎音楽と脚本が見事にマッチ
音楽を手掛けたのは
トニー賞作曲家ジェイソン・ロバート・ブラウンって人。
いろいろなジャンル対応の器用な作家で、
代表作はトニー賞受賞作「マディソン郡の橋」。
本作では50、60年代を彷彿とさせる
フランク・シナトラ風ナンバーもたっぷり。
主人公ジャックを演じたのはロブ・マッククルーアー。
昨年、大コケしたミュージカル「チャップリン」で
タイトルロールを演じた人だ。
前作に比べ、かなり生き生きと、
マザコンのオタクっぽい男性役、ジャックを大好演!
結婚の最大の障害となる、
カジノの詐欺師に扮するのはトニー・ダンザ。
70年代から80年代にかけて、アメリカのホームドラマ
「タクシー」、「フーズ・ザ・ボス」などで
一世風靡した二枚目俳優。
名前は知らなくとも顔を見れば、
あーこの人って わかるほど知られた存在なのだ。
さすが大ベテラン、演技も歌も卒なくこなすトニー・ダンザ。
NYタイムズ紙の劇評は、褒めちぎり・・・袖の下?笑
私には、70年代のテレビキャラが強過ぎて
というかとっくに賞味期限切れ・・・
しかも助演のはずなのに、
楽曲、演出すべて主役より目立っているし・・・
意味わからんわ・・・
さりながら、そんな厳寒に耐えうる
ポテンヒットの可能性を秘めた
このコメディミュージカル、
ほとほとついてない・・
1、開幕がブロードウェイの観客動員が厳しい1月
1、宣伝が足りんと・・・開演後、PR広報会社を変えるという珍事
1、ラスベガスものは、ブロードウェイではタブーというジンクス
その結果・・・・
観客動員が伸びず、すでに黄色信号点滅中!
この手のラブ・コメディ・ミュージカルが
一般に認知されるまで 果たして延命できるのか、
かなり微妙。
個人的には、つかの間寒さを忘れさせてくれる、
お気楽コメディミュージカルとして、
その存在価値をみとめているので、
春を迎える前に、笑いの一花咲かせたいって方々は
お急ぎになった方がよろしいかと・・・・
さて、本作を翻訳上演するのなら・・・・
主役のジャックは・・・・
吉本新喜劇の座長 、茂造役が大ブレイク中の
辻本 茂雄さま
そして
助演のトミー役は「おじゃましますぅー」❤️の
島田一の介さま
この際、おもろければ歌唱力なんてどうでもよかと!
この配役なら、抱腹絶倒間違いなし!
吉本新喜劇のミュージカル路線・・いいんじゃな〜い?
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★
Nederlander Theatre
208 West 41st Street
New York, New York
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