舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
華やかなブロードウェイの祭典トニー賞が幕を閉じ、
不肖ワタクシの歌謡シャンソンSHOW「はだかの王様と私」も
お蔭様で好評のうちに終演を迎え、
なんざましょ。
このもの憂さと甘さのつきまとう
見知らぬ感情は・・・
なんて柄にもなく
サガン風味のおセンチに
浸っている暇などございませんの!
まずは、
蝶よ花よのブロードウェイの舞台裏の
とーっても生臭いお金のお話から・・・。
昨シーズン開幕したミュージカルの
チケット週間売上のベスト3は・・・・
(6月7日現在)
第1位 「パリのアメリカ人」 (1億7千万円)
第2位 「王様と私」 (1億4千万円)
第3位 「ネバーランド」(1億3 千7百万円)
ちなみに、一位と二位は、
それぞれトニー賞4部門受賞!
まさに
舞台のクオリティーと
興行収入との
相関関数が見事にマッチングしとりますの♡
が、しかーし
三位の「ネバーランド」は
チケット売上では上位なのに
トニー賞にノミネートさえされず・・・
これは一体どゆこと?
「ファインディング・ネバーランド」は
ジョニー・デップ主演の映画を舞台化。
知名度だけは抜群なんだよね!
ストーリーは・・・
劇作家であるJ.M バリーはスランプに陥り、
なかなか新作が書けない。
そんな時、ロンドンにあるケンジントン公園で、
未亡人シルビアとその子供4人と出会う。
その中の一人の少年がモデルとなり
児童文学の名作「ピーターパン」完成させると言う、
いわゆる
メーキング・オブ・ピーターパンってなお話。
まずこのファミリー・ミュージカルの見どころは
話題満載の演者達・・・
◎マシュー・モリソン
人気テレビドラマ「グリー」で大ブレイク。
今や飛ぶ鳥落とす勢いの
超売れっ子ミュージカルスター。
日本にもファンが多い。
TVで見せつけた、その抜きん出た歌唱力と演技力、
そしてルックスは折り紙付き!?
◎ケルシー・グラマー
TVコメディドラマ「そりゃないぜ!?フレイザー」、
「チアーズ」で一世風靡した性格俳優さん。
本作ではフック船長とチャールズ・フローマン役の二役を演じ分ける。
彼のしゃくれアゴを見れば、
あーあの人ね・・とわかるはず。
言ってみれば、本作の最強の人寄せパンダだわね!
◎ダイアン・パウルス
2013年「ピピン」でトニー賞再演賞受賞。
現在、超売れっ子演出家の彼女が作り上げた
ファンタジー・ワールドだったが・・
彼女、やる気あったのか!?
本気でトニー賞狙ってたんだろうか?
ピーターパンそのものではなく、
それを劇作家が創作するまでのプロセスに
焦点を当てたストーリーは、
おもしろーい着想だー。
が、しかーし
▲センチメンタル過多な脚本・・
おまえは甘いだけの
無果汁コーンシロップ満載の
アメリカンソーダかっ!
▲何が何でも夢は願えば叶う的な安直なメッセージ
▲映画「タイタニック」っぽい楽曲
(セリーヌ・ディオンが出てくるかと・・笑)
▲犬出せば、いいってもんじゃないのよ!
トニー賞に動物賞があってもノミネートさえ無理だろうなぁー。
素面のマチネ観劇だったのだけど
眠気を我慢できず、
何度ウトウトしたか!
ま〜一言で言ってしまうと
所詮、アイドル・ミュージカルなのよね。
私がやっぱ見たいのは
空飛ぶ郁恵ちゃん・・・ じゃなくて
ピーターパンそのものだわな!
ところで、ここ最近、
映画を舞台化した作品で記憶にあるのは・・
「ビッグ・フィッシュ」
「ハネムーン・イン・ベガス」
「ジジ」
「ロッキー」
「ジジ」だけは、まだ延命中だが、
どれも数ヶ月で撃沈!
ハリウッドでヒットしたからって、
それをそのままブロードウェイにもってきて
二匹目のどぜうを狙ったって、
そーは問屋が卸さないのよね〜
やはり、映画の舞台化で必須なのは
オリジナルの映画を超えるくらいの
挑戦的な何か・・・
そんな作品の出来ながら「ネバーランド」は
前述の通り、本作は連日ほぼ満席!
回りの観客を見渡せば、子供連れの家族と、
モリソン目当ての
ニキビ面&歯列矯正ブリッジ装着の10代の女の子達だらけ!
身も蓋もない言い方かも知れないけれど、
率直に申し上げて、
ファミリーミュージカルっていい商売よね〜。
ブロードウェイに子供料金の設定なんてないから
家族4人がオーケストラ席のチケット買えば、
それだけで600ドル前後・・・
興業の金庫番であるプロデューサーにとっては
上得意様。
ビバご家族連れ、って事なのでしょう・・・
感性や倫理観を問うような、
重厚で作り込んだ作品が好きな人には
物足りなさの残る作品だけれど、
分かり易いストーリー。
テレビで良くみかけるあのイケメンも出ているし、
なんの予習もなく肩の力を抜いて見れる楽チンミュージカルを
探している人には最高の作品なのかもね!?
さて、本作を翻訳上演するとしたら・・・
主役、J.M バリーには
日本ミュージカル界が誇るプリンス3人、
井上芳雄さま
浦井健治さま
山崎育三郎さま
にトリプルキャストでお願いしとうございます。
間違いなくチケットは完売でございます。
マシュー・モリソン、ケルシー・グラマーを
生でご覧になりたいという、
そこのあなた、
韋駄天走りで劇場へ急げ!
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★
Lunt-Fontanne Theatre
205 West 46th Street
New York, New York 10036
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