舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
古くはジキル博士とハイド氏。
善人の化身みたよな
人の心の奥底に潜む悪魔や、
極悪非道のヤクザみたいな輩にも
清らかな発露など、
昔から様々なアートのテーマとなっている。
そんな興味深くも
恐ろしげな人間の二面性(二重人格)を、
扱った過激でスキャンダラスなダーク・コメディ。
自分自身の善悪の相克の果てに、
制御不能に陥った人間をパペットを使って描いた新作芝居。
それが・・・
「HAND TO GOD」 なのであーる!
この作品、試演段階から、
いろいろ物議をかもしておりまして・・・。
優しい内向的な主人公ジェイソンの
左手に巣くってしまった凶暴な手袋人形、
タイローン
その風体は、
手袋の先ちょのお顔に丸書いてチョン
子供達が手を突っ込んで遊ぶ人形よ・・・
もっとわかりやすくいうと
ヘェ〜イ!!
レッドスネェ〜ク!!!
カモォ〜ン!!」
でおなじみ(古すぎ)
東京コミックショーのあれ!
3つの壷から
出てくる
赤、黄色、緑の蛇の縫いぐるみ
イメージしてちょー!
◎登場人物は5人
◎ジェイソン/タイローン(手袋人形)
◎マーガリー(ジェイソンの母、
◎ティモシー(ジェイソンの不良の同級生)
◎ジェシカ(ジェイソンが恋する同級生の女の子)
◎ストーリーは・・・
舞台はアメリカ、
マーガリーは夫の死後、
教会で手袋人形を使って
教を教え解く会を催す。
が、集まったのは息子のジェイソンと
彼の同級生、ティモシーとジェシカだけ。
ある日のこと、ジェイソンが操る
タイローン人形がジェイソンの意思に関係なく喋り始める。
ジェイソンの心に鬱積していた闇の部分が口汚く
人形のタイローンによって吐露されはじめると言う
楳図先生チックな展開に!
タイローンは、ジェイソンの秘密を暴露することに始まり、
ジェイソンは次第にタイローンに支配され、
終いにタイローンは凶暴な悪魔となり ティモシーの耳まで食いちぎってしまう・・・
人間の本音をパペットに代弁させる
アダルト版の「セサミストリート」なのだ。
人形芝居と言う
牧歌的ミディアムに、
過激アダルトコンテンツをぶち込むと言う、
2003年に大当たりしたミュージカル
「アヴェニューQ」
「ブック・オブ・モルモン」
「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」
系譜きゃなぁー!?
それらがヒットした当時は、
人種差別、同性愛、ネットポルノなどの
人が赤面するような過激ネタに
びっくらこいたもんだが・・
「HAND TO GOD」は、
過激さと
エログロさ
ヴァージョンアップ!
まるでホラー映画「エクソシスト」の
悪魔にとりつかれてしまう少女役の
リンダ・ブレアの演技と
ジェイソン役のスティーヴィン・ボイヤーが
超リンクするのよね!
そして、
人間のサイコロジカルな部分では、
つい最近、教会で黒人礼拝者ら9人を
殺害した 白人の青年の
「憎悪犯罪」を想起させる過激部分も。
◎見どころは・・・
何と言っても、
主演のジェイソンとタイローン手袋人形の二役を演じた
スティーヴィン・ボイヤー
なにが凄いかって・・
腹話術の「いっこく堂」のように
人形がしゃべっている時に
口を動かさないことが凄いとか いうことでなく、
ボイヤーの場合、 ジェイソンが喋っている時
タイローンはそれ対するリアクションし
またその逆も・・・
要は同時に二役を演じる
それも天と地ほどの差のある二役を
完璧に演じる彼の演技力が天才的なのさ。
残念ながら、 今回プレイ部門の主演男優賞を逃したが、
彼は、昨シーズンのスター誕生のひとり!
彼ほどの実力の持ち主なら
ブロードウェイ出演オファーだけにとどまらず
ハリウッド映画からもお誘いがくるはず!
その他にも、粒ぞろいの役者が脇を固めている。
トニー賞では、本作から3名がノミネート
ジェイソンのお母さん役を自暴自棄に演じたジェニーバ・カー。
抜群の笑いの間でジェシカに扮したサラ・スタイル。
◎客層(私が観劇した日)
白人の30から40代が中心の観客で満席!
歯に衣着せぬ本音の応酬に劇場は爆笑の渦。
手袋人形のエグいセックスシーンや
血なまぐさい自虐行為に目を塞ぎたくなるシーンも多々。
お年を召した方の中には席を立つ方もチラホラ。
なので、
蝶よ花よのハッピーな舞台をお望みの方にはおススメで来ません。
過激でダークなギリギリをどこまでも追求した本作。
NYならではのアダルトなコメディを覗いてみたい人は覚悟してご
混沌とした現代へメッセージを感じ取る事が出来るやもしればせん
さて、本作を翻訳上演するのなら・・・・
いっこく堂さま
天才的な腹話術も入れた演出でも 見てみたい!
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★★★
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