舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
先ずはおさらいからね、みなさん、はい♪
ジュークボックス・ミュージカルとは・・・
既存のヒット曲をちりばめて、
後付けストーリーでもって隙間を埋める、
比較的安全に、安直に出来ちゃうミュージカルの事。
制作側にとっては・・
ゼロベースから作詞作曲を始めて、
物語を紡いでいくのに比べたら・・・
はるかにラクチン。
楽曲のクオリティーや知名度&人気は既に保障済み。
宣伝や話題作りもカーンタン。
普段ミュージカルに
接する事のない
観光客からすると
知ってる有名人のお馴染みの曲を
口ずさめるという取っ付き易さは超魅力。
なので、ブロードウェイで上演された
ジュークボックス・ミュージカル、
枚挙にいとまがありません。
けれども舞台自体がヒットしたか、という観点からみると、
ABBAの「マンマ・ミーア!」
フランキー・バリーとフォーシーズンズの「ジャージー・ボーイズ」
キャロル・キングの「ビューティフル」 の3作くらい???
その背後には死体累々なわけで・・・
いくら知名度や、楽曲の人気度は折り紙付きってったって、
実際にお客様がガンガン入らなければ、
すぐに閉幕・・ってのがブロードウェイのキビシーイ掟。
そこで今回ご紹介したいのが、
これまたジュークボックス・ミュージカル「レノン」
(正式名称は『レノン~スルー・ア・グラスオニオン~』)
音楽好きなら知らぬ人はいない、
伝説のビートルズのメンバー、
ジョン・レノンのミュージカルなのです。
お察しの通り、ジョン・レノンのミュージカルはこれが始めてって訳は無く、
すでに2005年にミュージカル化されとりまして。
世界で最も知られた日本人、オノ・ヨーコも全面的なバックアップ
鳴り物入りの開幕当初の鼻息は荒かったのだけど・・・
世の中はそんな甘いもんじゃないの!
開幕2005年8月14日
閉幕2005年9月24日
たった一ヶ月ほどでブロードウェイ版は撃沈したのだよー!
さて、この度のオーストラリア産のオフ・ブロードウェイ版は・・・
開幕は10月15日。
内容的には、ジョン・レノンの人生と愛と平和を歌で紡ぐ構成。
その部分ではブロードウェイ版もオフ版もほぼ同じ。
その一方で相違点は・・・
オフ版は 超シンプル
舞台上にはグランド・ピアノが一台、
ステージ中央にはスタンドマイクが一本
ジョン・レノンを演じるジョン・ウォーターズの服装は、
黒のTシャツ、パンツ、皮ジャンという超ラフなスタイル
レノンに似せようと、カツラをかぶるわけでもなく
縁なし眼鏡かけるでも無し。
赤の他人のおっさまの本人の素のまま。
選曲も偉い違う。
ブロードウェイ版は、ビートルズの著作権が取れなかったため
ほとんどが、ビートルズを解散後のジョンの曲がほとんど。
それに比べ、オフ版は馴染みの多いバラエティに富んだ選曲
また、
豪華な装置があるわけでも、
ゴージャスな衣装があるわけでも、
凝った照明があるわけでもない。
役者の力量一本勝負!
オフ版、ジョン・ウォーターズ扮するレノンさんの、
語りには、心の襞まで表現されていると見たね。
派手派手ながら、「スターものまね王座決定選」ともいえるオンに比べると、
オフ版のレノンの方が、
魂の部分も含めて、
ずっとアーティスティック!
難をいえば、台詞を話すテンポがちょっと早過ぎる事。
観客の反応を見ながら、
間を持って話せば、
ライブとしてもっと楽しめるのに・・
実はこのウォーターズさん、オーストラリアでは、
1992年からこのショーやってるんだって。
まー、同じことを20年以上もやってれば、
寝てても台詞も歌も出て来る感じなんだろうし・・ 仕方なかっちゃね?
もうひとつ、ひとり芝居もいいのだが、
ピアノの伴奏者と言葉のキャッチボールをすれば
もっと演出に広がりが出るのではないかと・・。
食べ物を美味しく食べるコツ
たとえば、スイカ
塩を振って食べると・・
一層甘くなって美味しい!!
寿司飯だって・・・
ちょっと塩を入れると・・
味全体がまろやかに!!
そう、料理の決めては
甘さ、酸っぱさ、苦さ、塩辛さの加減と調和
っていきなり、おまえは桐島洋子かぁー!?って
ジュークボックス・ミュージカルも
料理と同じだと思うのよ。
笑だけでもダメ、
お涙頂戴だけでもダメ
懐古主義だけでもダメ
見かけだけでもダメ
それらが絶妙なさじ加減で、
すべてが調和したときに
人を強く心に残る作品ができるのさ!
もし,本作を我が母国でやるのなら・・
この超絶シンプル禅ヴァージョンのレノンさんを演じ通せるのは・・
モト冬樹さんの実の兄で、
「ルフラン」の井上望の旦那
エド山口さん!
見かけなんかどーでもいいの、
魂の籠ったレノンさんの
歌とつぶやきをお願いしたい!
来年2月21日までの限定公演
蛇足ながらご報告。
やれ安直だの安全牌だの言いながらアレなのですが、
小生カプチーノも、オフオフでジュークボックス舞台を画策中!
これまで見まくって来たジュークボックス・ミュージカルの良いトコ取りで、
濃ゆーい作品になる筈(汗)ですので、乞うご期待!
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★★
Union Square Theatre
100 East 17th Street
New York, New York
Facebookを利用してコメントする