舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
.
.
40年近くにわたり
ポピュラー音楽界で
不動の位置を築き上げ
巨万の資産を築きながらも
社会奉仕や慈善事業に心血を注ぎ、
その実直な私生活でも知られる、
大物感、大御所感ハンパ無い・・・
スティング様
...,
御年63歳
これまでの輝かしい
公私にわたる経歴に、
更なる年輪を刻まんと、
なんとブロードウェイ・ミュージカルに挑戦
そのミュージカルが・・・・・
「ザ・ラスト・シップ」
.
.
元になっているのは、
2013年にリリースされた、同名のアルバム
これまでの、グラミー賞ソングライターの
ブロードウェイ進出といえば
2000年、「アイーダ」エルトン・ジョン 作曲のみ
2010年、「スパイダーマン] ボノ(U2) 作詞作曲
2012年、「キンキー・ブーツ」シンディ・ローパー 作詞作曲
。
などが思い出されるが、
スティング様の場合、何が凄いって、
戯曲のコンセプトから音楽まですべてが彼のアイディア。
もちろん、作詞作曲はスティング様ご本人の書き下ろし。
そして・・・
ミュージカル「ザ・ラスト・シップ」の誕生秘話
長期に渡り、全く曲作りができないスランプ陥っていたスティング。
そんな中、頭に浮かんだのが、
自らの故郷、英国のウォルズエンドという造船の街。
それを振り返ったときに湧き出るように曲が出来たのだという。
そこからミュージカル制作へ発展したのだと・・・
行き詰まりを憶えた大物アーティストが、
長いスランプのトンネルの向こうにみた、一条の光、
遠い昔に見捨てた故郷にインスパイアされて、
創造力を回復して行く。
そのプロセス自体がとてもドラマチック!
ストーリーは・・・
物語の舞台は1980年代のイングランド北東部の造船業の町。
野望を抱き、女を捨てて街を見捨てた男が,
父の死をきっかけに 故郷に戻ってくる。
15年ぶりに戻ったその街は造船所の閉鎖で
変わり果てた姿になっていた。
.
.
.
.
見どころは・・・・
◎なんと言っても、目玉はスティング様書き下ろした楽曲!
一曲一曲、天から授かったようなケルト音楽の旋律が
随所にちりばめられた、 心に残るフレーズの数々。
ポリス時代の大ヒット曲「Every Breath You Take」
邦題「見つめていたい」から30年以上が経過したけど、
御年63歳の彼の創作力は、まだまだ現役!
トニー賞楽曲賞はもう彼に決まり!
◎振付 振付はスティーヴィン・ホゲット
ブロードウェイの典型的なシアターダンスとは異なり
印象深いアクションを取り入れることを得意とする振付家だ。
本作では、足をストンプ、ジャンプさせる野郎っぽい動きを随所に。
アイリッシュダンスや、オフ・ブロードウェイ「STOMP」を思わせる。
制作陣には「RENT」を
ブロードウェイの名作ミュージカルに押し上げた
ジェフリー・セーラーとケヴィン・マカラム他
巨額の賭けをする脂ぎったプロデューサーたち。
また、ブロードウェイのトップ・クリエイターの顔ぶれだけでも
鼻息ゼェゼェ聞こえるような、大いなる野心的なものを感じる!
世界的なヒット曲を連発したカリスマ、スティング様の
ブロードウェイデビューだもの・・・
製作陣の方々も、絶対に失敗は許されないと
肝の命じて望んだプロジェクトだと思うのだけど・・・・
暗い
とにかく
暗い
スティングの実体験から来た
リアルな人間関係の複雑さ、
時の経過など普遍的なテーマを
盛り込もうとした意図は解らなくもない
ブロードウェイのミュージカルにありがちな
愛の力ですべて解決、めでたしめでたしな
予定調和作品でないことも分かっている。
ミュージカルが成功する重要な要素である脚本
肩に力が入り過ぎた感、
詰め込み過ぎ感が拭えない。
○船のオーナーとの諍い等、斜陽の造船村の労働争議
○三角関係なラブ・ストーリーの要素
○それぞれに、プロットを抱える、多すぎる主要人物
などなど、 盛り過ぎたために、
図太いメッセージ性や深い人物描写にまで、
至らず焦点がぼやけてしまったのは残念。
売れるミュージカルにしなければという
気負いがありすぎちゃいます!?
「ライオン・キング」の演出家
ジュリー・ティモアも言っておりました。
脚本と同じくらい重要なのは
"伝える方法だと"
いっそのことスティングの
モノローグ・ミュージカルってもありか!?
舞台にはスタンド・マイクだけ。
ギター一本で
造船所の思い出も語りながら歌う。
特別限定2ヶ月間公演
チケットは即完売だろう・・
10月26日に処女航海に出た本作だが・・・
スティングのコンサートに
舞台上に添付されたミュージックビデオを見に行く、
くらいに割り切って鑑賞するならば、
彼のファンにとっても
忘れ難い舞台になるのでは・・と思うが・・
豪華の舞台装置上で美男美女が
キラキラ系の衣装に身を包み、
音楽やダンスで夢の一時を
堪能したいという方にはおススメしません。
果てして、スティングのミュージカルは
不死鳥
それとも
灰・・・???
もし、母国で翻訳上演するのなら・・
15年ぶりに故郷に戻ってきた男役は
石丸幹二様
半沢直樹で見せたクソ上司のような泥臭い演技を期待します1
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★(★)
Neil Simon Theatre
250 West 52nd Street
New York, New York 10019
Facebookを利用してコメントする