舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
クリスティン・チェノウスって女優。
小柄で超器用な彼女。
まるで山椒ように
小粒でピリリと辛い、
を地で行く様に、
躍動感に溢れるエネルギーに満ちている。
そんな彼女が
5年ぶりに
ブロードウェイに戻って来た。
それが・・・・
「On the Twentieth Century」(20世紀号に乗って)。
舞台は・・
1932年、シカゴからニューヨークに向かう特急列車20世紀号。
特急列車だなんて、
それが今のアムトラックのしょっぱさからは
想像を絶するような高級列車なのさー。
IACE さんやアムネットさんで
簡単予約の日本航空のファーストクラスすら
青ざめてしまうような豪奢な内装や、
粋に着飾った乗客達を観るだけでも、
クラシカルなものがお好きな方には
満足いただけるとおもうよー。
ストーリー
落ち目のプロデューサー兼演出家オスカーが
再起をかけて企画したブロードウェイショーに、
元恋人であり、映画スターである
リリー・ガーランドの起用しようと企む。
与えられた時間は16時間。
列車がシカゴからニューヨークの
グランド・セントラル駅に到着するまで、
オスカーはリリーにショーの契約書にサインをさせ、
彼女と、よりを戻そうと七転八倒するのだが・・・
ちょっと専門的に蘊蓄コーナー(トリビアを披瀝したい人だけどうぞ)
昨今のブロードウェイでは
10年に一度くらいの割合で
昔のミュージカルがリサイクルされている中
本作は、なんと40年ぶり!
脚本を手掛けたのは、
ベティー・カムデンとアドルフ・グリーンってコンビ。
すでにお亡くなりになっている
お二人が共同制作したものには
「オン・ザ・タウン」
「ピーターパン」
「ワンダフル・タウン」などなど
ブロードウェイ・ミュージカルの第二次黄金期の
頂点をきわめた、すごーい方々なのよー!
本作でも、ミュージカルにドンピシャの
ショービジネスねたで
蘊蓄なしに魅せて大爆笑させてくれるんよ!
脚本の流れとマッチしたオペラチックな音楽で
全曲を書き上げたのはサイ・コールマンというお方!
「オペラ座の怪人」のアンドリュー・ロイド・ウェーバーと比べると
地味・・・
しかーし、
30年以上ミュージカル音楽を作り続け
ブロードウェイ演劇界を支えた重要人物なのじゃ。
見どころは・・・
◎ずば抜けたキャスティングの良さ
ブロードウェイの役者の質の高さは、
いまさら言うまでもないが
本作の場合、文句の付けようがない!
主役に寄り添う名脇役の存在で
スターを一層引き立てたり、
作品をギュッと引き締めたり、
下手すりゃ後々まで色褪せぬ余韻を残して
主役を食っちゃったり・・・・
特に目が離せないのは
精神病院の脱走者の老婦人レティシアを演じた
メアリー・ルイズ・ウィルソンというベテラン女優。
笑いのツボを心得た台詞の間。
おばあちゃんの典型的な所作も絶妙!
もうお一方
主人公リリーの恋のどれい、
ブルースに扮したアンディ・カール。
昨シーズン、ブロードウェイで初演された
超話題作 ミュージカル「ロッキー」で
タイトルロールを演じた男だ!
吉本新喜劇のノリで、滑ってこける!
脳みそ空っぽのマッチョぶりが偉い板つき!
彼って助演で光る役者なんかも!?
そんな名脇役を従えて
舞台で彗星のごとく光り輝き
名演技が見せるのが、
クリスティン・チェノウスと
ピーター・ギャラガーのお二人。
大袈裟な演技になりがちな
コメディを
軽妙に
コミカルに、
場の空気を感じながら、
また、先を読みながら
超パワフルに・・・・
また、チェノウスさまとギャラガーさまの
丁々発止のやりとりは名人芸!
予定調和な筋立てだけど、
スピーディな演出&名演
プラス楽しい楽曲に乗っちゃうと
ある意味とても心地よい。
安心して観ていられるってわけなのよ。
全体のレベルの高さと
バランスの良さが本作の強みだぁーね。
「旧き良き紐育」とか
「ブロードウェイの黄金時代」
なんて宣伝文句に
ビックンビックン、
ビュビュビュビュビューンって
感応してしまう
そこのアータは
お気に召すハズよ。
さて、本作を日本で上演するとしたら
主役のリリー・ガーランド役には、
並外れた度胸を買って
ええかげんいせいやー
人の車当てたらどんするんや
ゴラァァァァァァァ!!の
お品のよろしい
秘書をお持ちの
浪速のエリカ様
人生訓とメイクをしっかり勉強して登場頂きましょう!
上演は7月5日までの限定
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★★
American Airlines Theatre
227 West 42nd Street
New York, New York 10036
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