重度の腎不全を患っていた53歳の女性が、豚の腎臓移植手術を受け、手術は成功しました。女性は、遺伝子操作した臓器を移植された数少ない患者の一人で、回復と長期生存が期待されています。
トワナ・ルーニーさん・豚の腎臓移植患者
「血液が体を流れるのを感じました。腎臓の血液循環が強かったからです」
トワナ・ルーニーさん(53)は、豚から遺伝子操作した臓器を移植された世界で5人目の患者です。ルーニーさんは、ニューヨーク大学医学部などの医療研究チームによって事前に必要な治療が行われ、11月25日移植の手術が行われました。
インスー・ヒョン博士・生命科学公共学習センター所長
「これは、臓器不足を解消するための非常に重要な要素だと思います」
現在遺伝子操作をした臓器は研究の段階で、ルーニーさんの手術は臨床試験の一つです。この飼育施設では、研究者が遺伝子操作をした豚を飼育し、人間用の臓器を作っています。
デビッド・アヤレス博士・飼育研究施設研究者
「もし、遺伝子操作しない豚の臓器を移植したら、それが腎臓であれ心臓であれ、患者の体は数分でそれを拒絶するでしょう。つまり、私たちは免疫をコントロールする遺伝子を臓器に直接組み込んでつなげているのです。」
しかし遺伝子操作をした組み換え臓器の移植は、まだ成功例がほぼなく、最初の4人の移植患者は、移植後3カ月以内に全員亡くなりました。ルーニーさんは7年以上も人工透析を受け、そのうち5年間は、免疫などの適合する人間の腎臓移植の順番を待っていました。
トワナ・ルーニーさん・豚の腎臓移植患者
「2017年にこの研究のニュースを聞いて希望が湧きました。どうしても試してみたかったのです」
ルーニーさんは、20代の時、自分の腎臓の一つを母親に提供しました。この後ルーニーさんは高血圧症からくる腎不全を発症し、自身も腎臓移植が必要な患者となりました。
トワナ・ルーニーさん・豚の腎臓移植患者
「人生の第2のチャンスを得たようなものです」
ルーニーさんは12月初旬に自宅のあるアラバマ州に戻り帰り、順調な回復を見せています。現在アメリカでは、およそ9万人の患者が腎臓移植の待機リストに載っていますが、2023年に腎臓移植を受けたのはおよそ27000人に留まっていて、待ち時間は3年から5年と言われています。待っている間に症状の悪化で移植が受けられなくなることのも少なくありません。この新たな医療の取り組みの成功が期待されています。