国内への麻薬流入を阻止するためとしてトランプ政権がベネズエラ沖などで麻薬密輸船とみなした船を標的におこなっている攻撃をめぐり、ヘグセス国防長官が戦争犯罪にあたる指示を出したと報じられ、連邦議会が調査を開始しました。
トランプ政権は今年9月から、南米からのアメリカへの麻薬の密輸を阻止するための作戦だとして、ベネズエラなどから麻薬を運んでいるとみなした船舶をカリブ海や太平洋で攻撃してきました。このような攻撃はこれまでに20回以上行われ、少なくとも83人が死亡しています。
トランプ政権が公開した映像には、9月初め、ベネスエラの麻薬密輸船とされる船をミサイルで爆破する様子が映されています。この日の攻撃についてワシントンポスト紙は先月28日、1度目の攻撃の後に船の残骸にしがみつく生存者2人に向けて2発目のミサイルが発射されたと報じました。また、当時ヘグセス国防長官が、船の乗組員全員を殺害するよう命じたとも報じています。
国際法では、脅威ではなくなった敵の戦闘員の殺害は禁じられています。ヘグセス国防長官はワシントンポスト紙の報道を「捏造」だと非難。軍は、武力紛争法に従って行動したと主張しています。
また、ホワイトハウスのレビット報道官は、1日月曜日、2度目の攻撃は作戦を指揮していた海軍のフランク・ブラッドリー提督が指示したと発表。攻撃は軍事的な交戦規則にのっとって行われた合法なものだとしています。
ホワイトハウス キャロライン・レビット報道官
「ヘグセス国防長官はブラッドレー提督にこれらの攻撃の実施を許可しました
ブラッドレー提督は自身の権限と法律の範囲内で行動し、
船を確実に破壊し、アメリカ合衆国への脅威を
排除するために指揮しました。 」
攻撃が行われた翌日、メディアのインタビューで、船が爆撃されるのを目撃し、乗っている人物まで見えたと答えていたヘグセス長官ですが、2日火曜日には2度目の攻撃が行われる際はその場にいなかったと説明。また、1度目の攻撃後は何も見えなかったとしています。
ピート・ヘグセス国防長官
「最初の攻撃は見ていました。ご想像通り、戦争省にはやることがたくさんあります。1、2時間居続けることはできません/だから次の会議に行きました。/「生存者は見ていません。船は炎上し、爆発して火と煙で何も見えませんでした 「戦場の霧」と呼ばれるものです」
問題になっている日の船舶攻撃について、トランプ政権は当初から1度目の爆撃の様子は公開していましたが、2度目の攻撃映像は公開していませんでした。記者にそのことを問われたトランプ大統領は3日(水曜日)、映像公開は「問題ない」と答えています。
ドナルド・トランプ大統領
「彼らが何を持っているか知らないが、何か持っているのであればもちろん公開する。問題ないよ。我々は攻撃したすべてのボートを停止させ、2万5千人ものアメリカ人の命を救った。さらに、海から流入する薬物は91%減少しているんだ」
この問題に関しては与野党双方の議員が懸念を示していて、超党派の議員による調査が始まっています。2度目の攻撃を指示したとされるブラッドリー提督は4日(木曜日)、議会上院と下院の軍事委員会や情報委員会の指導部に、公開されていなかった2度目の攻撃映像を見せ、ヘグセス長官による「全員殺害」の指示はなかったことなどを説明したということですが、下院の民主党議員の中からは、トランプ政権が戦争犯罪の疑いがある攻撃についてブラッドリー提督に責任を押し付けようとしているとの非難の声も出ています。