労働省が、今年3月までの1年間の就業者数の伸びを大幅に下方修正しました。労働市場が当初の見方よりも早く減速し始めていたことを示すものとされ、FRB・連邦準備制度理事会の動きが注目されています。
労働省は9日火曜日、今年3月までの1年間の非農業部門の就業者数の伸びが、推計されていた数値よりも91万1000人少なかったと発表しました。これは、この期間に創出された雇用が、当初の発表の半分ほどのおよそ85万人に過ぎなかったことを意味しています。今回発表されたのは、新規事業や廃業した事業をより適切に反映させることを目的として毎年行われる、いわゆる「ベンチマーク改定」の速報値で、確定値は来年2月に発表されます。
発表された改定値では、特にサービス業での下方修正が顕著で、ホテルやレストランなどのレジャー、ホスピタリティ業の雇用者数は17万6000人、弁護士事務所やコンサルティング会社などの 専門・ビジネスサービス業は15万8000人、小売業は12万6000人、それぞれ減少しています。
これに先立って5日金曜日に発表された8月の雇用統計では、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は前の月と比べて2万2000人の増加にとどまりました。 7万5000人程度の増加を見込んでいた市場予想を大幅に下回る数値で、失業率は2021年以来の高い水準である4.3パーセントに上昇しています。
「バンクレイト」シニア経済アナリスト マーク・ハムリック氏
「最近のアメリカの経済成長は、標準を下回るものの依然として継続しています。4.3%の失業率は危機的水準には程遠いものの、4月以降雇用の減少が続いていることで雇用情勢が悪化するリスクがあり、それが失業率のより顕著な上昇につながる可能性もあります」
Mark Hamrick, Senior Economic Analyst, Bankrate:
"Recently, growth has been below par, but still has continued in the U.S. The unemployment rate is hardly at crisis levels at 4.3 percent, but the risk is with this fall-off in hiring since April that we do see a deterioration in the job market and that could also lead to a more pronounced increase in the unemployment rate."
8月の就業者数の伸びの鈍化は、大規模な関税措置をはじめとした予測できない経済政策を警戒した企業が雇用に消極的になっていることによるものと見られていました。しかし、今回改定値が出された1年間のうちの大部分はトランプ大統領就任前のもので、つい最近まで経済の明るい材料とみられていた労働市場が、当初思われていたよりも早い時期から減速していたことを示唆するものです。
ホワイトハウス キャロライン・レビット報道官
「これは、トランプ大統領がバイデン政権から、これまで報告されていたよりもはるかに悪い経済を引き継いだことを非常に明確に示しています。また、連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を過度に引き締めていることも証明しています。金利は高すぎます。バイデン政権から引き継いだ混乱のため、FRBは金利を引き下げる必要があります」
Karoline Leavitt, White House press secretary:
this makes it very clear that President Trump inherited a much worse economy by the Biden administration than ever reported. And it also proves that the Federal Reserve is holding our monetary policy far too restrictive. Interest rates are too high. The Fed needs to cut the rates because of the mess that we inherited from the Biden administration."
下方修正された数値は バイデン政権時代のものだと強調したレビット報道官は、「現在の政策は成果をあげている」として、トランプ大統領が関税やその他の経済政策を調整する意向はないと述べました。
労働市場の冷え込みを示す数値が次々と出てくる中での今回の改定値発表はFRBへの政策金利引き下げ圧力をますます高めるものと見られています。来週にはFRBが金融政策を決めるFOMC・連邦公開市場委員会の会合が開かれる予定で、専門家の中からは、来週の会合だけでなく、10月と12月の会合でも利下げを継続するとの見方も出ています。