世界有数の石油や天然ガスの産出国のアメリカですが、「ゾンビ井戸」と呼ばれる、源泉の枯渇や生産量の制限などで操業を停止し放置された油井(ゆせい)やガスの井戸が、深刻な環境汚染を引き起こしています。ABCニュースが特集取材を行いました。
アメリカ全土で、過去に地下資源のために掘られた井戸が放置され、その多くが腐敗し有毒物質が漏れ出しています。そうした井戸は周辺の地下水を汚染し、発がん性化学物質や可燃性化学物質を大気中に放出している可能性もあり、専門家によると、25以上の州で350万個以上のゾンビ井戸が存在すると言われています。
エネルギー分野専門家アダム・ペルツ氏
「約1400万人が、これらの井戸から1マイル(1.61km)以内に居住しています」
ABCニュースの全米の6つの支局及び系列局がこの問題を取材し、5つの州で70を超える放置された油井などを検査しましたが、そのうちの40カ所から油や可燃性ガス漏れを確認しました。
ABCニュース記者
「この入江は四方を廃棄された油井やガス井戸に囲まれています」
石油の産出地として有名なテキサス州には、他のどの州よりも放置された油井が多くありヒューストン郊外のトリニティ湾では100カ所を超えます
ABCニュース記者
「何かが漏れている音です。聞こえます」
これらの井戸は、何年も放置されてパイプなども腐敗しています。
ABCニュース記者
「放置された井戸がどうなるかを示す顕著な例がここビーマー湖です。漏れた有毒物質を含む水でできており汚染された水が毎分約2270リットル(原文600ガロン)吹き出しています。近づくと危険で、野生動物にとっては致命的です」
この井戸は1950年代に掘削(くっさく)されましたが、石油は発見されず、水の井戸になりました。ビーマー湖は、家族が営む牧場のすぐ隣にあり、牧場内にも汚染水が湧き出る有害物質が漏れ続ける井戸がいくつもあります。
牧場主ワイト氏
「この土地は永久に死んでいます。何も育ちません」
放置されたこれらの井戸を塞ぐには、何百万ドルもの費用がかかります。
修繕や撤去費用は、石油会社やガス会社が井戸の掘削を始める前に支払う義務がありますが、ほとんどの場合実際に掛かる費用を賄うのに十分ではなく残りの費用を納税者が負担することになります。
エネルギー分野専門家アダム・ペルツ氏
「関連業界は、この放置井戸にかかる負担が、国民にのしかかることのないように、もっと努力する必要があります」
ABCニュースは取材で、エネルギー業界団体からの回答も得ていて、それによると、「地下資源の開発事業において、これらの廃棄井戸の安全な封鎖は最優先されるべきものでエネルギー開発事業者が、最初から最後まで、安全で信頼でき、かつ環境に配慮した工程で行う責任がある」とコメントしています。