次のスティーブ・ジョブズと呼ばれていた血液検査のスタートアップ企業の女性創業者が、詐欺などの罪で有罪となりました。
3日月曜日、カリフォルニア州の連邦地裁で血液検査のスタートアップ「セラノス」の創業者エリザベス・ホームズ被告37歳が投資家への詐欺など4つの罪状で有罪評決を受けました。
ホームズ被告は2003年にスタンフォード大学を中退し、19歳で血液検査企業をシリコンバレーに設立。数滴の血液で 200種類以上の検査ができる技術があるとうたい、黒のタートルネック姿から「次のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれていました。TEDトークで登壇したホームズ被告は「わずか数滴の血液で様々な検査ができるようにしました。」と語っていました。
ホームズ被告は、投資家から7億ドル以上の資金を集め、社外取締役には、トランプ政権で国防長官を務めたジェームズ・マティス氏や元国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏など、そうそうたるたる顔ぶれが名を連ねていました。
セラノス社の評価額は一時90億ドルに上り、2015年、ホームズ被告が31歳の時にフォーブス誌の「女性起業家者番付」で首位に輝きました。しかし、その年の内部告発報道により、セラノス社が掲げる200種類の血液検査が可能な装置が実際には存在しないことが明らかになり、2018年に詐欺罪や共謀罪などで起訴されました。
ホームズ被告は、裁判で証言台に立ち、投資家を欺いたのではないかとの質問に対しそれを否定し、無罪を主張しました。また、裁判でホームズ被告は、19歳年上の元恋人、セラノス社の元幹部で同様に詐欺などの罪で起訴されているラメシュ・"サニー"・バルワニ被告から精神的、そして性的な虐待を受けていて、会社についてもバルワニ被告の支持に従わされていたと主張しました。バルワニ被告はこれを否定しています。
弁護側は、ホームズ被告は一度もセラノス社の株を売却していないとし「詐欺師なら株を売却し、犯罪者なら隠ぺいし、ネズミなら溺れる船から逃げるが、ホームズ被告は会社とともに沈んだ」と主張しました。一方、検察は「ホームズ被告のセラノス社への執着こそが詐欺の動機で、会社を成功させようと必死で犯罪を犯した」と主張しました。有罪評決を受けたホームズ被告は禁固刑に処される可能性もあるということです。
内部告発者の証言によりますと、セラノスでは投資家へのプレゼンテーションの際、その場で少量の血液を取り、裏で別会社の検査キットを使って結果を出していたということです。
スタートアップが盛んなシリコンバレーでは「Fake it till you make it(成功するまで騙せ)」という言葉があり、投資家や利用者の争奪戦が繰り広げられています。しかし、そのフェイクが大きな夢を実現するためのビジョンなのかペテンなのか見分けることは難しく、今回のように人々の健康にかかわることは特に、Peer Reviewと言われる 専門家による検証が必要だという声が出ています。