多額の資金を運用するヘッジファンドに個人投資家らが対抗し、今後の株取引の在り方に影響を及ぼすのではないかと注目されています。
先週、ゲームソフトなどを店舗で販売する「ゲームストップ」の株価が急上昇しました。年明け17~19ドルで取引されていた株価は1月の28日木曜日には、一時483ドルまで上昇。これは、個人投資家らが市場で多額の資金を運用するヘッジファンドに対抗したものとみられています。
ヘッジファンドは、ゲームストップ株に対し空売りと呼ばれる仕組みで利益を上げようと仕掛けていました。これは、ゲームストップの株価が下がると見こして、一時的に借りたゲームストップの株式を売り、値が下がったところで株を再び購入して返すことで、差額を利益にするという仕組みです。例えば、借りた株を100ドルで売り、値下がり後の80ドルで買い戻して返却すれば、20ドルの利益がでます。
しかし今回、ネット株取引アプリ「ロビンフッド」などを利用する個人投資家らがヘッジファンドの空売りの動きに気付き、「レディット」と呼ばれるSNSの投稿サイトでゲームストップ株の大量買いを呼びかけました。これにより株価は一時1700%の急騰を見せ、ヘッジファンドは、急騰したところで株を買い戻すことになり、巨額の損失をかぶりました。ブラックベリーなどでも同様に株価の急騰が起きており、個人がウィールストリートを打ち負かした形になりました。個人投資家の一人は「ウォールストリートに参加したみたいで面白かったです。」と語りました。
この騒動を受け、ロビンフッドは、 28日木曜日にゲームストップ、AMC、ブラックベリーなどの株の購入を停止しました。29日金曜日には制限付きで取引を再開させましたが、個人投資家らは、正当な理由なく顧客から潜在的利益を奪ったとして、同社を提訴しています。ロビンフッドは、株価の急騰で、株売買の決算機関への保証金が爆発的に跳ね上がり、対処しきれずに購入を一時停止したと釈明しています。
ニューヨーク州の検察官は、ロビンフッドの調査を検討すると発表。また、与野党の有力議員もロビンフッドの動きを批判しています。民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は自身のツイッターに 「ヘッジファンドが自由に取引できる一方で、なぜロビンフッドは個人投資家の購入を妨げたのか、その経緯を知る必要がある」と投稿。共和党のデッド・クルーズ上院議員もこれに賛同しました。
議会下院金融委員会は、18日木曜日に関係者の公聴会を開くと発表しています。また、 SECアメリカ証券取引委員会もこの問題を調査するとしています。民主党リッチー・トーレス下院議員は、「アメリカの株取引はカジノのような状態です。SECにより、市場を制御する必要があります。」と語りました。
ロビンフッドは1日、保証金の調達ができたとして、全ての取引を再開しています。ウォール・ストリートをパニックに陥らせた今回の騒動で今後ルール変更が必要かどうか検討されるということです。専門家はこうした取引は非常にリスクが高く、個人投資家として参入する場合は、投資額を余裕のある金額に抑えることを勧めています。