アメリカ女子体操界で起きた性的虐待事件の捜査について、シモーン・バイルス選手を含む4人が議会で証言しました。
アメリカ体操協会の元チームドクター、ラリー・ナッサー受刑者が女子選手に性的虐待をしていた事件で、FBI連邦捜査局の対応に不手際があったとされる問題を受け、15日水曜日、4人のトップアスリートがアメリカ議会上院司法委員会で証言しました。
シモーン・バイルス選手は「若き体操選手、オリンピック選手に限らず、もう誰にも私や他の数百人の犠牲者が 抱え続けているナッサーの虐待による恐怖を味わってほしくない。責任はラリー・ナッサーと同時に、性的虐待を可能にし実行させた組織全体にあると思う。」と言葉を詰まらせ涙ぐみながら語りました。
ナッサー受刑者は長年にわたり、数百人の体操選手を性的に虐待したとして2018年に懲役175年の実刑判決を受け、現在も服役中です。しかし、当時、捜査を行ったFBIの対応に深刻な不備があり、ナッサー受刑者の逮捕が遅れたことで被害者がさらに増えたとされています。
オリンピック金メダリストのアリー・レイズマンさんは「FBIになんども話を聞いてほしいと懇願しましたが、連絡がくるのに14カ月かかりました。その間ナッサーはあらたに100人以上の被害者を性的に虐待したのです。何も知らない子どもたちを小児性愛者に虐待させるお膳立てをしているようでした。」と語りました。
今年7月にアメリカ司法省が出した調査報告書では、FBIは2015年にすでに性的虐待疑惑の情報を得ていたにもかかわらず、緊急性を持った対応を怠り、その後、自分たちの過失を隠蔽しようとしたとしています。
同じくオリンピック金メダリストのマッケイラ・マロニーさんは、当時のFBIの聴き取り調査で13歳のころからナッサー受刑者に性的虐待を受けていたと語ったといいます。公聴会ではその時のことについて証言しました。「FBIに国外大会でのことを電話で話しました。飛行機に乗るためナッサーに睡眠薬をもらい、その夜、私は全裸で、誰もいない中で、彼は私の上に乗り何時間も性的に虐待しました。その話をしながら私は泣き出しましたが、それを聞いた捜査官は無反応でした。 私のトラウマを聞いて何も感じない捜査官にショックでした。しばらく沈黙したあと一言『それだけ?』と。その言葉を聞いた時が 捜査の中で最もひどい経験の一つでした。」
現在のFBI長官クリストファー・レイ氏は、FBIの失態にはげしい怒りを感じるとして謝罪。当時、捜査を担当していた捜査官1人を解雇したと発表しました。公聴会での証言を受け、FBI捜査官やアメリカ体操協会の関係者など選手への性的虐待を知りながら見て見ぬ振りをした全ての人物の責任を追及し、刑事訴追に持ち込むべきだと上院議員らからも怒りの声が聞かれました。