アメリカ大統領選まであと1年を切りました。各党の候補者選びは3ヵ月後、アイオワ州の党員集会で幕を開けることになります。政権の奪還を目指す野党民主党の候補者選びでは、左派と中道派が国民皆保険制度の是非をめぐり、白熱した議論を展開しています。
民主党の指名争い候補のうち急速な追い上げを見せるのは、エリザベス・ウォーレン上院議員です。7月からの4ヵ月で支持率を10ポイント上げ、一時は本命と目されているジョー・バイデン前副大統領を上回りました。
先月行われた民主党の第4回テレビ討論会では、ウォーレン氏が、公約の目玉とする国民皆保険制度について訴えた際、具体性がないと集中批判を浴びた場面がありました。こうした批判に対策を打った形で、ウォーレン氏は先週、皆保険制度の実現に向けた具体案を発表しました。
ウォーレン氏の主張は、民間の医療保険をすべて廃止し、代わりに政府が全国民に無償で保険を提供するというものですが、具体案では、このために20兆5000億ドルの予算が必要だと試算しています。さらにこの財源を確保する方法として、大企業や富裕層への約6兆ドルの課税や、軍事費8000億ドル分の削減など具体的な数字を交えて示した上で、「中間層の税金は1セントたりとも上げない」と強調しました。
国民皆保険制度をめぐっては、左派のウォーレン氏やバーニー・サンダース上院議員が実現を目指すのに対し、バイデン氏を始めとする中道派は、非現実的だと主張していて、民主党内を二分する争点の一つとなっています。今回のウォーレン氏の具体案は、中道派を納得させるには至らず、中道派の候補者たちからは次々と、莫大な費用を捻出する過程で頓挫すると指摘が上がりました。また、同じ左派のサンダース氏も、ウォーレン氏とは一線を画す提案をしていて、「皆保険制度実現には、大企業や富裕層への大幅な課税はもちろん、中間層を含めた全国民が一定の負担を強いられることになるが、結果的に一人一人の医療コストを大きく下げることにつながる」と主張しました。
ABCニュースとワシントンポスト紙による今月3日付の世論調査では、バイデン氏が支持率28%と依然首位。ウォーレン氏が23%、サンダース氏が17%と続き、討論会などで存在感を示してきた若手候補、インディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏が9%で4位に食い込んでいます。