トランプ政権が ギャングメンバーとされる不法移民およそ250人を 法的手続きなしにエルサルバドルの テロリスト監禁センターに送り込んだニュースはこのコーナーでもお伝えしましたが、うち1人は手続き上の間違いがあり謝って他のギャングメンバーと国外追放されていたことをトランプ政権が認めました。しかしその人物をアメリカに連れ戻すことは ないとしています。また、裁判所でも州の連邦地裁が連れ戻すよう命じましたが 最高裁がそれに待ったをかけ、事態は二転三転しています。
トランプ大統領は先月15日、第二次世界大戦中に日本人や日系人を収容所に移送するために用いられた「敵性外国人法」を適用し正当な法的手続きなしにギャングメンバーとされる移民、およそ250人を国外追放。そのまま世界で最も過酷な環境と言われるエルサルバドルの テロリスト監禁センターに 連行しました。
このとき、ワシントンDC 連邦地裁は 「敵性外国人法」の発動は適切ではないとして
全員の国外追放差し止めを命じましたが、政権は従わず全員が収監されました。当時、ギャングメンバーではないと主張する人が数名いましたが正当な法的手続きなしに強制連行されました。エルサルバドル国籍のキルマー・アブレゴガルシアさん(29歳)もその一人で アメリカ人の妻を含む家族らが 政府の間違えだとしてアメリカに連れ戻すよう裁判で訴えています。
弁護士によるとアブレゴガルシアさんはエルサルバドルで父親が営んでいた郷土料理、ププサの店がギャング団の標的となり、脅迫を逃れて2011年、16歳でアメリカに不法入国。 2019年にICE移民関税執行局に拘束されたということです。
アブレゴガルシアさんの弁護を担当する
サイモン・サンドバル・モシェンバーグ移民弁護士
「2019年ICEに逮捕されたとき匿名の情報提供者から
ギャングメンバーだと密告されました
その密告以外の証拠はなに一つありません
ギャングだという情報があったため
裁判が行われましたがそこで彼は勝訴したのです」
裁判で勝訴したアブレゴガルシアさんは強制送還から守られる保護資格と国土安全保障省から就労資格が与えられました。アブレゴガルシアさんはメリーランド州在住で アメリカ人のジェニファーさんと結婚し子供が3人。板金加工の仕事をし、最近は電気技師としての資格を取るためにメリーランド大学で授業を受けていたということす。 これが事実なら前科もなく合法的にアメリカで暮らしていた人物が法的手続きなしにに国外追放され、テロリスト監禁センターに連行されたことになります。
しかしトランプ政権は手続き上の間違いがあり誤って追放したことは認めていますが
テロリスト監禁センター送りは変わらないとしています。
パム・ボンディ司法長官
「行政手続き上の間違いで国外追放されたわけですが
彼はよく知られたギャングメンバーです
弁護側の言い分は彼が職人で電気技師になるための勉強をしていたということですが
このあいだ逮捕した凶暴な殺人犯は老人ホームで壁紙を貼っていました
彼が電気技師の勉強をしていたから
凶暴なギャングメンバーではないというのは道理が通りません
私たちは今後もアメリカの安全のためこういう人間を国外追放します」
トランプ政権は、追放した人物はギャング団MS13のリーダー格で人身売買にも関わっていたとしています。しかしその証拠となるものは、いまだ一つも出していません。トランプ大統領も、今回発生した間違えは関係していたギャング団が 違っていただけで問題はないとしています。
ドナルド・トランプ大統領
「バイデン(前大統領)のせいで数百万人がこの国に入った
この人物がトレン・デ・アラグアではなくMS13のメンバーだったから
すぐにアメリカに連れ戻せというが
MS13はトレン・デ・アラグアと同じぐらい悪質だ」
裁判でトランプ政権の弁護士は管轄外で あるエルサルバドルの刑務所から囚人を連れ出す権利はアメリカにはないと主張。これに対しメリーランド州の連邦地裁は4日、国外追放は違憲だったとしてトランプ政権に7日(月曜日)までにアブレゴガルシアさんをアメリカに連れ戻すよう命じました。
その期限となる7日に連邦最高裁判所が上訴したトランプ政権の求めに応じこの命令の一時執行停止を認め、事態は長引く様相を見せています。
アブレゴガルシアさんの弁護を担当する
サイモン・サンドバル・モシェンバーグ移民弁護士
「これは恐るべき事態です
政府も間違いを起こすことはあります
しかし政府が間違いを素早くやってしまえば後の祭で追求もできない状況は
全ての人にとって恐ろしいことです」
連邦最高裁判所は7日(月)アブレゴガルシアさんの連れ戻し命令一時阻止に加え「敵性外国人法」の適用も妥当という判断を下しこの件についての裁判闘争でトランプ政権にとって2つの連続勝利となりました。しかし連れ戻し命令停止については一時的で今後裁判は速やかに進められると見られています。