トランプ大統領の弾劾調査のきっかけとなった、いわゆるウクライナ疑惑をめぐり、キーパーソンの一人として注目されていた駐ウクライナ大使代理が議会下院で証言しました。
疑惑は、トランプ大統領がアメリカ大統領選の民主党有力候補、バイデン氏に不利な情報を得るため、ウクライナに捜査を求めたとするものですが、その際トランプ氏が"捜査をしなければ軍事支援金4億ドルを拠出しない"と、交換条件を出したと言われていて、議会下院はこれを弾劾調査の焦点の一つとしています。
今月初めに明るみに出た国務省の外交官同士のテキストメッセージのやり取りには、この支援金をめぐる内容が示されています。特に、トランプ氏に近いと言われるゴードン・ソンドランド駐EU大使と、ビル・テイラー駐ウクライナ大使代理の間で交わされたメッセージの中には、テイラー氏が「ウクライナが捜査に同意するまで支援金を出さないなどクレイジーだ」と、支援金を利用した駆け引きを批判する内容が含まれ、注目されていました。
22日には下院の召喚を受けたテイラー氏が非公開で証言を行いました。証言でテイラー氏は、ソンドランド氏から「支援金を含めた全ては、ウクライナの大統領がバイデン氏を捜査すると公に宣言するかどうかで決まる」と伝えられてことに言及。また、「自分の理解では、国務省やCIA・中央情報局、NSA・国家安全保障局などの情報機関は、トランプ氏に予定通り支援金を支払うよう促すため説得に動こうと会合を計画していた」とも語りました。いずれも、トランプ氏が支援金を駆け引き材料に使ったことを裏付ける内容で、証言の後、現場に立ち会った野党民主党の議員は「議員になって今日ほど不快になった日はない」などと話していました。
一方、これに先駆け、17日のホワイトハウスの会見では、マルバニー大統領首席補佐官が、ABC記者とのやり取りの中で支援金をめぐる駆け引きがあったと認めるような発言をし、その後対応に追われる出来事もありました。与党共和党の間では、かねてからトランプ氏に批判的だったロムニー上院議員はもとより、グラハム上院議員などの重鎮も、証拠次第では弾劾を支持するとも取れる発言をし始め、トランプ氏の求心力が深刻なレベルに揺らいでいる様子が伺えます。こうした動きに懸念してか、トランプ氏は週明けの会合で、共和党には民主党に対抗するため団結が必要だと語気を強めました。