匿名の政権スタッフが、トランプ大統領と外国の首脳との会話に懸念される内容があると内部告発。これをきっかけに、野党民主党が大統領弾劾に動く事態に発展しました。
<ワシントン・ポスト紙の内部告発報道>
事の発端は18日、ワシントン・ポスト紙に、トランプ政権の内部告発に関する記事が掲載されたことです。記事では、「トランプ大統領が外国の首脳と電話で話した内容に、強い懸念がある」と、先月、政権スタッフの一人から告発があったと伝えています。トランプ氏はこれを、「フェイクニュースだ。自分は外国の首脳と不適切な内容を話したりしない」と一蹴しました。
告発文書は「重要な懸念事項」として提出されたもので、こうした文書は、7日以内に政府の情報機関を通じて議会に渡すことになっています。しかし、国家情報局のマグワイヤ局長代行は、司法省と相談の上、議会に通知しないままこれを処理していて、野党民主党は「重要な内容を隠ぺいする行為」と厳しく批判し、告発文書を直ちに提出するよう求めました。
<ウォールストリート・ジャーナル紙の続報>
トランプ氏が話した相手が誰なのか憶測が飛び交う中、19日、ウォールストリート・ジャーナル紙は、電話会談は7月に就任したばかりのウクライナのゼレンスキー大統領としたものだと報じました。内容は、表向きにはゼレンスキー大統領の就任祝いとされていましたが、このとき、アメリカ大統領選の民主党有力候補、バイデン氏とその息子、ハンター氏の疑惑に関しても話されていたということです。
バイデン氏が副大統領だった当時、息子のハンター氏はウクライナのエネルギー会社の役員を勤めていて、報酬は月5万ドルにのぼっていたと言われています。そしてこの会社に汚職があると疑い、捜査していたウクライナの検察官は、解任されています。ウォールストリート・ジャーナル紙の記事では、トランプ氏は、検察官の解任にバイデン氏が関わっていると見て、8回にわたって、ウクライナのゼレンスキー大統領に捜査を進めるよう、迫ったと報じています。
さらに、捜査要請に応じなけれな、ウクライナに拠出する軍事支援金を払わないと、トランプ氏が圧力をかけたとも報じられています。その後、ワシントン・ポスト紙の報道で、実際にウクライナにあてた支援金4億ドルの支払いが、トランプ氏の指示で、つい最近まで滞っていたことがわかりました。
<トランプ氏の反応>
一連の報道についてトランプ氏は、ゼレンスキー大統領と話したこと、そして、バイデン氏についても話が及んだことを認め、その上で、不適切なやり取りはなかったと強調しました。 軍事支援金については、駆け引き材料に使った事実はないとしながらも、支払いが滞った理由については、ある時は「ウクライナが汚職で有名なことに懸念があった」、ある時は「EU諸国に比べてアメリカの負担が大きすぎるため検討していた」と説明が二転三転しています。
25日には、トランプ氏自らゼレンスキー大統領との通話記録を公表。メディアは、記録の中にバイデン氏の捜査を求める内容があると指摘しましたが、トランプ氏は「圧力はかけていない」と、あくまで潔白を主張しました。
<民主党とペロシ下院議長の対応>
次々と明るみに出た事態に、民主党からはトランプ氏の弾劾を求める声が一層高まりました。特に、共和党多数の上院では賛成が得られず頓挫すると、大統領弾劾に消極的だった民主党トップのペロシ下院議長も、一連の事態を受けて一転、「大統領職への宣誓、国家安全保障、選挙の公平性への裏切りだ」とトランプ氏を非難し、弾劾に向けての調査に踏み切りました。
<今後は?>
国家情報局のマグワイヤ局長代行は、26日に議会で証言する予定で、告発文をなぜ速やかに提出しなかったのか、厳しく追求されるとみられます。告発したスタッフが誰かについても、来週には公になる見込みです。