先週、ペンシルベニア州で起きた鉄鋼大手USスチールの工場の大規模な爆発事故をめぐり、老朽化が進む工場の存続に反対する声が高まっています。
この事故は今月11日、USスチールのお膝元であるピッツバーグ近郊のモンバレー製鉄所にあるクレアトン工場で起きたものです。石炭を加熱して製鉄の原料である「コークス」を作る炉が爆発し、2人が死亡、10人が病院に搬送されました。事故当時は定期メンテナンスに向けたガスバルブの洗浄が行われていて、バルブの破損が爆発の原因と見られています。
事故が起きた工場は北米最大級のコークス製造工場で、 およそ110年間操業を続けてきました。しかし、施設の老朽化で安全面や公衆衛生面での問題が度々発生し、USスチールが支払った罰金や和解金の額は2020年以降5700万ドルに上ると見られています。今年も事故や不具合が相次いでいて、2月には作業員2人が負傷する爆発事故が起きたほか、6月には硫化水素の排出量が増加し、近隣住民が悪臭被害を受けています。USスチールは以前からモンバレー製鉄所が 閉鎖の危機にあると示唆していて、従業員の間でも、存続に懐疑的な人が大半だったといいます。
環境・公衆衛生団体「ブリーズ・プロジェクト」 マシュー・メハリック氏
「私たちは何年もこの工場のことを懸念してきました。第一に地域住民の健康被害、そして従業員の健康被害を終わらせなければなりません。全ては工場への投資不足からくるものです」
Matthew Mehalik, Executive Director, Breathe Project:
“We’ve been concerned about this plant for years. The first thing is the community health harms need to come to a close and the worker health harms as well too.” all of these steam from, a pattern of under investment in the plant.
今年6月、USスチールを買収した日本製鉄は、工場閉鎖などを含めた運営の重要な決定についてアメリカ政府に発言権を与えることや、老朽化した工場での操業を続けるために110億ドルを投じることを約束していました。モンバレー製鉄所には22億ドルを割り当て、新工場の建設などに充てられると見られていましたが、今回の事故の修復に、さらに多大な費用がかかると見られています。日本製鉄はアメリカメディアの取材に対し、施設の存続などについての具体的な回答はしない一方で、「モンバレーとの結びつきは引き続き強い」として「現地のチームと協力し、全面的にサポートするために技術専門家を派遣した」としています。
環境・公衆衛生団体「ブリーズ・プロジェクト」 マシュー・メハリック氏
「老朽化が進み、ひどい状態の上に今回の事故での被害は甚大です。このような工場に資金を投じ続けることに意味があるのかという疑問は拭えないでしょう」
Matthew Mehalik, Executive Director, Breathe Project:
“You have a plant that is so old and in such bad shape, and now after this incident, the damage being pretty extensive, It’s imperative to ask the question does it make sense to keep dumping resources into such a plant?”
USスチールのブリットCEOは、今回の爆発事故後に日本製鉄側と話したことを明らかにした上で、モンバレー製鉄所は今後も存続すると述べました。
USスチール デビッド・ブリットCEO
「この施設とモンバレーは存続します。私たちはここに投資し、モンバレーで永続的な未来を築けるという確信がなければ日本製鉄との契約はなかったでしょう。この施設は今後もここにあり続けます。 」
David Burritt, CEO of U.S. Steel:
“This facility and the Mon Valley are here to stay. We’re investing money here and we wouldn’t have done the deal with Nippon Steel if we weren’t absolutely sure that we were going to have an enduring future here in the Mon valley. You can count on this facility to be around for a long, long time.”
安全が最優先事項だとするUSスチールは、クレアトン工場だけでも環境問題の克服のために年間1億ドルを費やしていると主張していますが、爆発の調査によって更なる問題が明らかになる可能性があるとの見方もあります。(20“)また、事故による損壊で生産計画が縮小され、復旧にかかる期間も不透明など問題は山積しています。今回の爆発事故は、老朽化の進むUSスチールの工場を維持していくという日本製鉄の決断を試すものになるとして注目されています。