サウスカロライナ州で弁護士の妻子が殺害された事件の裁判が全米で注目を集めています。殺人罪で有罪となったのは被害者の夫であり、父親である元弁護士でした。
サウスカロライナ州で1月末から始まった裁判で、2日木曜日、弁護側の最終弁論が行われました。妻と息子を殺害したとして2件の殺人罪で起訴されたのは、アレック・マードック被告54歳です。裁判で被告は「妻マギーと息子ポールが不びんです。何があっても私が2人を傷つけることはない。」と涙ながらに証言しました。
マードック被告は、民事訴訟を専門とする元弁護士で祖父や父親は検察官を務め、代々、法律に携わってきた地元でも有数な家族の一員です。現在は弁護士資格を剥奪されています。事件は、2021年6月、マードック被告が保有する広大な敷地内で起きました。マードック被告が1時間ほど認知症の母親の様子見にいき、戻ってきたら妻と息子が犬舎の近くで殺害されているのを発見したと警察に通報しました。2人はそれぞれ違う銃で撃たれていました。
被告は、事件が起きたとき、母親に会いに行っていて不在だったと警察の取り調べで話しており、それがアリバイとなっていました。しかし、殺害された息子の携帯電話から、事件が起きるわずか数分前に撮影した動画が見つかると、そのアリバイが崩れました。動画には、そこにいないはずのマードック被告の声が入っていたのです。マードック被告は、嘘(うそ)を認め、自身が鎮痛剤オピオイドの中毒で、捜査に対して不信感があったと釈明しました。被告は「頭が働いておらず 理性があったとは思えません。現場にいなかったと嘘(うそ)をつきました すみません。」と語りました。
また、マードック被告は、自身の法律事務所や顧客から数百万ドルの金を盗んでいたことを認めました。検察官の「2021年6月に至るまでに 盗む金額が年々増えましたね。」という質問に、被告は「そうです。」と答えました。しかし、殺人に関しては、無罪を主張し続けました。検察官の「 マードック被告、家族を滅ぼしましたか? 」という質問に「妻と息子を銃で撃ったかということですか?やっていません」と答えました。
1日水曜日、検察側の最終弁論が行われました。検察は、金融犯罪の疑いから捜査の目を背けることが動機だとし、家族が所有していた銃を使い、被告が犯行を実行したと主張しました。検察官は「動機があり、手段があり、犯行の機会があったのは彼だけです。」と語りました。2日木曜日には弁護側の最終弁論が行われました。弁護側は凶器が発見されていないことや、物的証拠がないことなど、被告を犯人だと断定する証拠が不十分で、疑いに合理性ながいとして無罪を主張しました。被告の弁護士は「たとえ金融犯罪がバレそうでも、愛する人を殺しません。」と語りました。
その後、陪審員は評議に入りましたが、予想以上の短時間で、マードック被告に妻と息子の殺害について有罪評決が出されました。判決は30年から終身刑の実刑で、3日金曜日朝9時30分から言い渡されるということです。
マードック被告は、金融犯罪についても、マネーロンダリングや脱税など99の罪で訴追されています。マードック家の周辺には、過去に起きたそのほかの死亡事故などについて様々な憶測が流れていて、ニュース専門チャンネルや動画配信サイトなどでは長編ドキュメンタリーを製作するなど、この裁判は全米で旋風を巻き起こしています。