カリフォルニア州とニューヨーク州の2つの地方銀行が立て続けに破綻したことで、全米で金融業界への不安が一気に高まり、政府が火消しにやっきになっています。
10日金曜日に破綻したカリフォルニア州のシリコンバレー・バンクに続いて、12日日曜日にニューヨーク州のシグネチャー・バンクが破綻し、多くの顧客が銀行に殺到する騒動となりました。ことの発端は、スタートアップ企業を主に顧客としているシリコンバレー・バンクが、8日水曜日、急速な利上げによる預金運用の失敗で含み損が膨れ上がったため、帳尻を合わせようと資産の売却に動きました。この情報がSNSで拡散され、パニック状態になった顧客が一斉に預金を引き出したことで銀行の現金が底をつき、10日金曜日、破綻しました。シリコンバレー・バンクの破綻は、2008年のリーマン・ショック以来、アメリカ史上2番目に規模の大きい銀行破綻です。
これを受けて地方銀行への信用不安が広がり、多くの仮想通貨企業を顧客として抱えていたシグネチャー・バンクにも預金の引き出しが殺到しました。NYDFS=ニューヨーク州金融サービス局は12日日曜日、預金者を保護するためとしてシグネチャー・バンクを閉鎖しました。
こうした事態を受けて、アメリカの金融監督機関が、破綻した銀行の預金を全額保護すると発表しました。バイデン大統領は、国民の預金は安全だと呼びかけるとともに、今回の預金保護について、税金を使う救済措置ではないと強調しました。バイデン大統領は会見で「預金保険基金の手数料から捻出する。」と語りました。
13日月曜日のニューヨーク株式市場では、地方銀行の株価が軒並み大幅値下げとなりました。翌日には下げ止まりましたが、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするファースト・リパブリック・バンクについて、15日水曜日に格付け会社が相次いでジャンク、投資不適格級への格下げを発表しました。ファースト・リパブリック・バンクは、自社の売却を含めて対策を検討していると報道されています。そうした中、信用不安を払拭するため、金融大手11社が合計およそ300億ドルの預金を行う支援策を発表しました。
2008年のリーマンショックからの教訓でオバマ政権で(2010年)銀行への規制が強化され、経営内容が安全かどうかを確認する定期的なストレステストが義務付けられました。その後のトランプ政権で(2018年) 中・小規模の銀行への規制が緩和され、リスク管理のチェック機能がなくなったことが今回の破綻につながったとする見方も出ています。
司法省とSEC証券取引委員会はシリコンバレー・バンク破綻についての捜査をはじめています。シリコンバレー・バンクのCEOは、経営破綻の数週間前に約360万ドル分の株を売却しており、今後、調査されていくものとみられます。
インフレを抑えるために利上げを続けてきたFRB連邦準備制度理事会は、来週会合が行われる予定で、シリコンバレーバンクの破綻による経済への影響も考慮されるとみられています。なぜ、シリコンバレーバンクが破綻するまで 誰もその危険に気づかなかったのか、今後、金融業界への規制も含めて原因の究明と対策が検討されるとみられています。