全米で深刻化する粉ミルク不足ですが、FDA食品医薬品局が国外からの輸入を可能にする緊急対策に乗り出しました。そうした中、必要な種類の粉ミルクが見つからず、体調を崩す子供も出てきています。
粉ミルク不足のきっかけは、今年2月FDA食品医薬品局が命じたアメリカ最大手アボット・ラボラトリーズのミシガン州にある工場の稼働停止です。FDAによると、この工場で製造された粉ミルクを飲んだ少なくとも4人の赤ちゃんが細菌による感染症で入院し、うち2人が死亡したということです。アボットは声明で、この感染症と製品を関連づける証拠はないとしています。
製品の回収と工場の稼働停止が影響し、5月半ばには全米で粉ミルクの品揃えが43%減り、8州とワシントンDCで50%以上の粉ミルク製品が品切れとなりました。乳幼児を抱える家庭では、深刻な事態となっています。乳幼児の母親は「主人が何カ所も店を回って探しています。」と語りました。新生児科授乳婦専門医は「早急に対策を打たなければ、餓死する赤ちゃんが出ます。」と語りました。
アメリカで使用されている粉ミルクの98%が国内で製造されており、国内最大手の工場が稼働停止となり、全米に深刻な影響をもたらしています。テネシー州では、基礎疾患を持つ子供のための成分を調整した特殊な粉ミルクが手に入らず、 代わりの粉ミルクを飲ませたところ体調を崩し、幼児2人が入院しています。病院では点滴で栄養補給を行い、うち1人は退院したということです。子供が入院している病院の小児科医は「患者が増えることを心配しています。代替の粉ミルクを使用している子供たちに、長期的に影響がないか心配です。」と語りました。
16日月曜日、 FDAはこうした事態への緊急対応策として、粉ミルクの輸入に踏み切ることを発表。輸入元として、食品の安全基準が類似する国が検討されています。FDA食品安全・応用栄養センターのスーザン・メイン所長 は「世界の製造会社の中から、アメリカの食品安全と栄養の基準に並ぶ商品を探しています。」と語りました。また、18日水曜日、バイデン大統領は粉ミルクを迅速に輸入するために、国防総省が民間機を使用できるよう指示しました。
アボットの工場について FDAは16日月曜日、職員への教育強化を含め、工場の衛生環境を改善し、専門家の監視をつけるなどを条件に再開を認めています。アボットは、工場を安全に再開させるには2週間かかり、その後、商品が店頭に並ぶまで2カ月かかるとしています。
今回の粉ミルク不足は、新型コロナ感染拡大による供給網の混乱の中、経済再開に伴う母親の仕事復帰で粉ミルクの需要が高まっており、さらにアボットの工場が稼働停止したことで起きたパニック買いの影響もあるとされています。同時に、全米の90%の需要が国内のたった4社に頼っているのが現状で、そのうちの1社の1つの工場が稼働停止し、全米が深刻な粉ミルク不足に陥ってしまった事態を問題視する声も高まっています。FDAは、消費者がより多くの選択肢を持てるよう、今後、規制緩和を含めて見直しが必要だとしています。
専門家は必要な粉ミルクが手に入らない場合は、医師に相談するよう呼びかけています。