海底に沈む豪華客船タイタニック号の見学ツアーを目的とする5人を乗せたた潜水艇が消息不明となり、アメリカとカナダの沿岸警備隊などによる必死の捜索が行われましたが、海底に潜水艇の一部が発見され、生存者はいないという見解が発表されました。
18日日曜日の朝、北大西洋の海底約3800メートルに沈むタイタニック号の残骸を見学する オーシャンゲート・エクスペディションズのツアーに出た潜水艇が、消息を断ちました。現場はマサチューセッツ州沖、東に約1400キロの海底で、アメリカとカナダの沿岸警備隊などがレーダーやソナーを使って捜索を行なっていました。会見でアメリカ沿岸警備隊は「潜水艇を見つけ、乗っている人を救助するためできるかぎりのことをする。」と語っていました。
潜水艇を搭載した船は、16日金曜日にカナダのニューファンドランド島を出発。18日日曜日の朝、5人を乗せた潜水艇が潜水を開始。開始から1時間45分で消息を絶ったということです。潜水艇には96時間分の酸素があり、捜索は時間との戦いと言われていました。懸命な捜索が行われる中、海中からものを叩く音が聞こえたと報告されるなど、奇跡的な生還も期待されました。
しかし、22日木曜日朝、捜索にあたっていた沿岸警備隊が、海底に潜水艇の複数の破片を発見。午後の会見で、乗っていた5人全員が死亡したとの見解を示しました。「ROV:遠隔操作ができる水中ロボットが、タイタニック号の船首から約500メートルのところに潜水艇の一部を確認した。水圧に耐える外殻が破壊していた。」
オーシャンゲートのツアーは2021年から始まり、1人$25万ドルです。科学者とともに海底に沈むタイタニック号を見ることができます。通常、潜水ツアーは8~10時間で、機体に不具合が生じた場合は海面に浮かび上がる仕組みも備わっていました。潜水艇にはGPSが搭載されておらず、海上の船とテキストメッセージで現在位置を確認するシステムだったということです。
2018年には、社内からこの潜水艇の安全性を疑問視する声が出ていました。水深およそ4キロでは水圧は水面のおよそ110倍におよび、潜水艇を繰り返し使用することで表面の強度が弱まり危険だと警鐘を鳴らした従業員、解雇されたとして訴訟を起こしていました。その後、オーシャンゲートは和解しています。
地元テレビ局が当時建造中の潜水艇を取材していました。地元テレビ局記者は未完成の潜水艇の中に中に入り、「5人が体を引き寄せあいモニターでタイタニックを見ます。パイロットは家庭用ゲーム機のコントローラーで潜水艇を運転します。」 と伝えました。
2000年にABCニュースの記者が取材で乗った潜水艇では、タイタニックのプロペラが接触する事故がありました。元ABCニュース記者は「怖かったです。潜水艇に乗っている人たちの気持ちがわかります。胸が痛みます。」と語りました。
潜水艇に乗っていた5人は:潜水艇を製造したツアー運航会社のCEO、イギリスの富豪、キスタンの実業家と19歳の息子。フランス人の海洋学とタイタニックの専門家です。
アメリカ海軍は、潜水艇が消息不明になったあと水中で爆発音のようなものを探知しており、これが潜水艇が水圧で破壊された音の可能性があるということです。今回の事故を受けて、一般の人も参加できるこうした深海をめぐるツアーや宇宙ツアーなど、危険を伴うツアーについて安全対策の規制を強化するべきだとする専門家の意見が聞かれています。