ウィスコンシン州で去年、警察官の行き過ぎた取り締まりと人種差別に対する抗議デモの現場で、銃を発砲して3人を死傷させた被告に裁判で無罪評決が言い渡されました。これに対し、各地で抗議デモが起きました。
事件が起きたのは去年の8月です。ウィスコンシン州ケノーシャで、黒人男性が白人警察官の銃撃で身不随になった事件から、激しい抗議デモが起きました。当時17歳だったカイル・リッテンハウス被告は、イリノイ州の自宅から半自動小銃を持ってデモの現場に訪れ、銃を発砲し、2人を死亡させ、1人にケガを負わせました。裁判で被告は、デモの現場に行ったのは暴徒から私有地を守るためで、そこで男性らに襲われたため、正当防衛で発砲したと主張していました。被告は、殺人や殺人未遂など5つの罪に問われていて、有罪となれば終身刑の可能性もありました。19日金曜日、陪審団が、全ての罪で無罪評決を言い渡すと、リッテンハウス被告は、その場で泣き崩れました。
市民の一人は「被告は自ら危険な場所に行く愚かな行動をとりましたが、アメリカでは愚かなことは罪ではありません。それでも正当防衛の権利はあります。」と語りました。一方、被告が黒人だったら、同じ評決に至らなかっただろうという意見もあります。ABCニュース法律専門家チャンナ・ロイド弁護士は「統計によると被告が黒人だったら評決は異なったでしょう。人々は今回の評決を不公平だと見ています。」と語りました。被告が自ら銃を持ってデモの現場を訪れたことから、正当防衛と自警行為についての議論がまき起り、週末、無罪評決に対して各地で抗議デモが起こなわれました。