新型コロナウイルスによる全米の死者数は昨日8万5000人を超えました。そんな中、新型コロナウイルスのワクチン開発を担う政府機関の局長を先月解任されたリック・ブライト氏が、議会下院で行われた公聴会で証言しました。
昨日、議会下院の公聴会で証言したブライト氏は、「このままだと2020年は近代史上最も暗い冬になる」と語り、現在の新型コロナウイルス対策は見直しが必要だと警鐘を鳴らしました。生物医学先端研究開発局の局長を務めていたブライト氏は、アメリカのワクチン開発を指揮する立場にありましたが、政府の対応に疑問を呈したことで局長を解任されたと主張しています。また、長年ワクチン開発に携わってきた専門家として、すぐにワクチンが開発されるとの期待は持つべきではないとして、ワクチンの開発に12ヵ月から18ヵ月かかるという予測は全てが完璧に進んだ場合の楽観的な見方だと語っています。
ブライト氏は、現在は新型コロナウイルスの治療薬としての効果が広く期待されている抗ウイルス薬「レムデシビル」の増産を急ぐようトランプ政権に進言したものの聞き入れられず、代わりにトランプ大統領が後押ししていた抗マラリア薬の入手経路を拡大するよう指示されたということです。しかしその抗マラリア薬は、通常の治療にくらべて死亡率が高くなった調査結果もあり、新型コロナウイルスの治療に使うことは認められていません。この公聴会についてトランプ大統領は、ブライト氏の警告を聞き入れない姿勢を示しています。昨日、国の経済活動再開を推し進める一貫としてペンシルベニア州を訪れたトランプ大統領は、医療用品の流通センター視察中も、一人、マスクを着用することはありませんでした。
一方、CDC・米疾病対策センターは、新たな感染拡大を防ぎ、安全に経済活動を再開させるためのガイドラインを発表しました。それによると、学校やキャンプでは、送り迎えの時間をずらし、不特定多数の子供同士の交流を制限することが推奨されています。また、レストランについては、ソーシャルディスタンシングの環境を整え、従業員の休みに柔軟に対応できるなどのいくつかの条件に対応できれば、営業の再開も可能だろうとしています。