警官に拘束されたジョージ・フロイドさんが死亡した事件を受け、全米各地で抗議デモが行われていますが、日中は平和的な抗議デモが行われている一方で、夜になると破壊行為や略奪が横行し、社会に不安が広がっています。また、トランプ大統領が平和的に行われていた抗議デモを強制排除したことへ批判の声が高まっています。
ミネソタ州ミネアポリスで白人警察官に首を押さえつけられ、ジョージ・フロイドさんが死亡した事件から8日目となった2日も全米各地で抗議デモが続いています。日中は平和的な抗議デモが行われている一方で、夜間は各地で破壊や略奪などの暴動が起きています。ニューヨーク市では4日間にわたり、夜間の略奪行為が続き、午後11時からの外出禁止令を午後8時からに繰り上げました。ABCの記者は、5番街では昼間のデモ参加者とは全く違うグループが警察と衝突したり破壊を行っていると報じました。デモ活動による逮捕者が出ているのは主に夜間で、暴動によって警察にもけが人が出ています。ネバダ州ラスベガスでは、警察官が銃で撃たれ危篤状態だということです。また、ミズーリ州では4人の警察官が銃撃され負傷ました。その一方で、ロサンゼルス市では警察官が膝をついて平和的に行われている抗議デモへの共感と敬意を示し、ニューヨーク市では警察署長がデモ参加者と手を取り合いました。ミシガン州のデトロイトでは、16歳のデモ主催者が参加者たちに夜間の外出禁止令を守るように呼び掛けています。
ワシントンDCでも、抗議デモが続いています。1日の夕方、トランプ大統領は「私は法と秩序を守る大統領です。平和的な抗議活動は支持します。」と語りましたが、この会見の最中、警察はホワイトハウス周辺で平和的に活動を行なっていたデモ隊に対し、ゴム弾と催涙ガスを使って強制的に排除していました。また、オーストラリアの報道陣が警察に殴られる様子も見られました。これは、トランプ大統領がホワイトハウスにほど近いセント・ジョンズ教会で写真撮影をするにあたり、デモ隊がいた場所を歩いて通過するためにバー司法長官が指示したものだったことが明らかになっています。トランプ政権のこうした対応に共和党からも批判の声が上がっています。ベン・サス上院議員は「神を政治に利用するための写真撮影で平和的な抗議デモを排除した行為に反対する。」と抗議しました。また、キリスト教のテレビ伝道師として知られ、トランプ大統領を支持しているパット・ロバートソン氏も厳しい態度を示し、「今は理解を示し慰め、互いに思いやるときです。大統領は違う方法を選びました。」と語りました。また、ロバートソン氏は、トランプ大統領が各州知事に対し、暴動を厳しく取り締まらなければ軍を動員すると脅したとして「これは自分勝手な人がすることです。大統領はこんなことはしてはいけない、見苦しい」と非難しました。
おさまる気配がない抗議デモ。各地の夜間外出禁止令もしばらく続きそうです。繰り返される警察による過剰取り締まりには、根本的な問題があると言われています。アメリカの警察官は法律による手厚い保護を受けていて警察組合も仲間意識が強く非常に強力です。システム全体が警察官を守るようにできています。もちろん、危険な場所へと赴く仕事ゆえに必要なことでもありますが、それが一部の警察官の行き過ぎた取り締まりにつながっていると見られています。今回も、4人の警察官が解雇され1人が殺人罪で起訴されていますが専門家は、解雇処分も覆される可能性が十分にあり殺人罪も裁判で有罪になるとは限らないとしています。
忘れてはいけないのは、アメリカではいまも新型コロナウイルスの感染は増え続けています。外に出る場合はマスクをして、極力ソーシャルディスタンシングを守るよう注意が呼びかけられています。また、デモに参加した場合はPCR検査を受けることが勧められています。