トランプ大統領がウクライナの大統領との電話会談で、次期アメリカ大統領選の野党民主党の有力候補・バイデン氏の捜査を求めたことが内部告発で明らかになりました。のちに公表された電話会談の通話記録も告発の内容を裏付けるもので、民主党多数の議会下院は、トランプ氏弾劾に向け、関係者を追及する動きを加速させています。
<疑惑の人物① 米国家情報局 ジョセフ・マグワイヤ局長>
国家情報局のマグワイヤ局長代行は、規定に反し、内部告発文を速やかに議会に報告しなかったことが問題視され、隠ぺいしようとした疑惑が持たれていました。マグワイヤ氏は先月26日に下院情報委員会で行われた公聴会で証言し、「内部告発は正しい行動だ」と、告発者を擁護しました。その上で、議会に文書を報告しなかった理由について、「大統領の権利を侵害する恐れがあった。大統領権限に触れる場合、その情報をどう処理するか判断するのはホワイトハウスだ。私の判断できる範囲を超えた、特殊なケースだ」と釈明しました。
<疑惑の人物② 米司法省 ウィリアム・バー長官>
内部告発文の議会への報告を先延ばしにした件には、アメリカ司法省が大きく関与したと指摘されています。さらに司法省のバー長官については、トランプ氏が電話会談で「バー長官に近く連絡させる」などと話していたことが通話記録から明らかになっています。この疑惑についてバー長官は、「ウクライナに接触したこともなければ、トランプ氏とウクライナについて話したこともない」と、関与を否定しています。
<疑惑の人物③ トランプ氏の顧問弁護士 ルドルフ・ジュリアーニ氏>
疑惑の"中心人物"とも言われ、最も深く関わっているとされるのが、トランプ氏の顧問弁護士、ジュリアーニ氏です。内部告発文書には30回以上にわたって名前が挙がり、電話会談の通話記録からも、トランプ氏が「ジュリアーニ氏と協力して捜査を進めてほしい」とウクライナの大統領に話す様子が確認できます。この件への説明を求められたジュリアーニ氏は、ウクライナと継続して接触していたことを認めた上で、「私の独断ではない。国務省が要請したのだ」と発言。これを受けて疑惑の目は国務省にも向けられました。ジュリアーニ氏に対しては下院が今週、調査資料の提出を求める召喚状を出しました。
<疑惑の人物④ 米国務省 マイク・ポンペオ長官>
ジュリアーニ氏からいわば"暴露"されて以来、疑惑調査の矛先として国務省は最も注目されることになり、下院は直ちに、ジュリアーニ氏よりも早くポンペオ国務長官に対して召喚状を出しました。ポンペオ長官は当初、ウクライナの大統領とトランプ氏との電話階段について「何も知らない」と話していましたが、のちに、ポンペオ長官自身も電話会談に同席していたことが明らかになり、疑いを一層深めています。ポンペオ長官は、両首脳の会話を聞いていたと認め、その上で、話されていた内容に問題はなかったと強調しました。国務省に対しては、下院が複数の職員に議会で証言するよう求めていますが、ポンペオ長官はこれを「脅しやいじめだ」と非難し、要求には応ない構えです。
<キーマン 内部告発者>
一連の事態のキーマンとなる内部告発者について、下院情報委員会のシフ委員長(民主党)は、近く議会に呼んで証言を求める方向で調整中だと明らかにしました。民主党は、あくまで内部告発者の匿名性を守るとしていますが、トランプ氏が面会を強く求めているほか、一部では、その身元に5万ドルの報奨金がかけられていることなどから、安全性が懸念されています。
<今後の動向>
トランプ氏をめぐっては、ウクライナのほか、オーストラリアの首相とも接触してロシア疑惑に関する内容を話していたと報じられ、下院は、トランプ氏やホワイトハウスが外国と接触した際の記録についても、詳しく調べるものとみられます。