トランプ大統領が署名した大統領令に対して連邦地方裁判所が差し止め命令を出す、という流れは最近よく聞くニュースですが、連邦最高裁判所が、連邦地裁による大統領令の差し止め権限を抑制する判断を示しました。
連邦最高裁判所の今回の判断は、「出生地主義」の制度見直しの大統領令に対する訴訟をめぐって示されたものです。アメリカ国内で生まれた子供に無条件で国籍を与えるこの制度について、トランプ大統領は就任初日、アメリカ国籍を得るにはもっと厳しい基準が必要だとしてこれを修正する大統領令に署名していました。
これに対して22の州などが提訴し、メリーランド州など3つの州の連邦地裁が大統領令は違憲として、全米を対象とする差し止め命令を出しました。政権側はその判断と、全米での差し止め命令を不服として上訴。最高裁に持ち込まれていました。
保守派6人、リベラル派3人の判事で構成される最高裁は先月27日金曜日、連邦地裁に全米規模の差し止め命令を出す権限はないとして、大統領令を阻止する地方判事の権限を抑制する判断を示しました。
保守派のバレット判事は多数派意見として、「連邦地方裁判所は行政を監視するのではなく、連邦議会が与えた権限に従い訴訟や論争を解決するもの」として、政府に違法性があった との結論に至っても、裁判所が自らの権限を超えることが答えではない」としています。一方でリベラル派のソトマイヨール判事は、この判断は、「政府が憲法を無視することを公然と受け入れているに他ならない」との反対意見を記しています。
一方、出生地主義の修正が違憲かどうかに関しては下級裁判所に差し戻し、最高裁の判断を踏まえて差し止め命令の範囲を調整するよう求めていて、30日間は大統領令を発効しないとしてします。
出生地主義修正の行方は不透明になった形ですが、最高裁の判断を受けてトランプ大統領はホワイトハウスの会見場に姿を現し 「記念碑的な勝利だ」と称賛しました。
ドナルド・トランプ大統領
「ここ数カ月間、少数の極左派の判事が大統領の正当な権限を覆し、国民が記録的な数の票を投じた政策の実現を阻止しようと試みてきました。これは民主主義に対する深刻な脅威でした。」
トランプ政権もバイデン前政権も、連邦地裁による全国規模の差し止め命令は個々の裁判官の権限を超えている、として反対してきました。特にトランプ大統領の2期目の就任以降に出された大統領令への差し止め命令は40件以上で、大統領が進める行政権の拡大と政府の改革を牽制する有効な手段と捉えられ、
政権側は不満を募らせてきました。
今回の最高裁の判断により、トランプ政権が、他の訴訟で出されている全米規模の差し止め命令についても撤回を求めるとの見方が強く、関税や軍備、移民、外交など他の多くの問題にも大きな影響を与える可能性が指摘されています。
この判断で大統領令の抑止力がなくなってしまうと心配する声もあがっています。また、出生地主義における今回の判断は、生まれた州によって認められる国籍が異なる人が出てくる可能性もあり混乱が予想されています。