民主党議員が軍の関係者などに対し、違法な命令には従わないよう呼びかける動画を投稿したことで、国防総省やFBI・連邦捜査局が捜査に乗り出す事態に発展しています。
この動画は今月18日、ミシガン州選出の民主党、エリッサ・スロットキン上院議員のSNSに投稿されたものです。90秒の動画では、スロットキン議員をはじめ、いずれも軍や情報機関に在籍した経歴を持つ6人の民主党議員が軍の関係者などに語り掛け、「現政権は軍隊や情報機関の専門家を国民と対立させている」として、憲法を順守し、「違法な命令」には従わないよう求めています。
「違法な命令は拒否できます
違法な命令は拒否しなければなりません」
兵士、特に指揮官は、違法と判断した命令を拒否することが明確に義務付けられていて、動画はそれを改めて喚起する内容です。しかし、トランプ大統領はこれについて20日、自身のSNSに「我が国にとって危険で、彼らの言葉は許されない」と投稿。「裏切り者たちによる扇動行為」だとして「死刑に値する」と激しく非難しました。
24日月曜日には国防総省が、動画に参加したマーク・ケリー上院議員について、軍法違反の疑いで調査中だと発表。ケリー議員は戦闘機パイロットを務めた海軍の退役軍人で、国防総省は、退役軍人を国防長官の命令で現役復帰させ、軍法会議やその他の措置の対象とすることを認める連邦法に言及しています。
AP通信記者
「ヘグセス国防長官は、自身のSNSへの投稿で、国防総省がケリー氏を特に調査する理由は、国防総省が管轄権を持つ人物が彼だけだったためだと説明しています」
また、自身のSNSに動画を公開したスロットキン議員は25日(火曜日)、 FBI・連邦捜査局のテロ対策部門から、動画に出た6人の議員に対する捜査の開始を伝えられたと発表しました。FBIは6人に聴取を要請していますが、その根拠などは明らかにされていません。
国防総省とFBIのこの動きは、トランプ大統領の投稿を受けてのものだと見られています。民主党からは、大統領が連邦の機関を個人的な攻撃や嫌がらせの道具として利用しているとの指摘が出ていて、「独裁者のやり方だ」との批判もあります。
エリッサ・スロットキン上院議員
「率直に言って、大統領の反応とFBIを我々に対して利用したことこそが、動画を制作した理由です。彼は、敵とみなした者に対して連邦政府を利用することを信条としているのです。」
スロットキン議員は今回の動画投稿のきっかけとして、トランプ政権が各地で進める州兵派遣で都市部に送られる兵士から、「すべきでないことをやらされるのでは」という不安を多く訴えられていることを挙げています。
トランプ政権が主に民主党基盤の都市部に州兵を派遣していることについて市民の反発は依然強く、全米各地で抗議デモも行われています。賛否が分かれるトランプ氏独自の政策が次々と法廷闘争に持ち込まれる中、司法省やFBIに大統領が直接指示を出している現状は権力が集中する危険を危惧する声も少なくありません。