アメリカの製造業復活を掲げるトランプ大統領が輸入製品に対して次々と関税措置を発動する中、国内の中小企業経営者からは様々な声が聞かれます。
ペンシルベニア州とニュージャージー州で水産物の小売・と卸を3店舗で経営するブライアン・セリガさん。多くのエビはメキシコ産牡蠣はカナダ産が多いので関税の影響は大きいといいます。
アメリカは3月4日にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を発動しました。その後、水産物を含む多くの品目について課税が4月2日まで延期となりました。本格的な関税導入を前に、セリガさんも多くの仕入れ先から 値上げを告げられています。
アーモンド会社経営
ザカリー・ウィリアムズさん
「(関税の発表後)国内産の魚介類も値段が上がってきました
東部ニューイングランド産の牡蠣はもう10%以上値が上がっています
セリガさんは、今後の仕入れについて、値上げ幅が小さくて済む魚介類に変更していくつもりだと話しています。2024年、水産物のアメリカへの最大供給国であるカナダからはおよそ39億6000万ドル(5900億円)相当が輸入されています。
世界最大のアーモンド生産地であるカリフォルニア。州が生産する中で 最大の農産物輸出品であるアーモンドは世界シェアの8割を占めています。アーモンドを栽培、収穫、加工し海外にも販売、流通を行う会社を営むウィリアムズさんは変更を繰り返す関税に振り回されことが事業を難しくさせていると感じています。
アーモンド会社経営
ザカリー・ウィリアムズさん
「関税がかかるとわかっていれば対応を考えることもできますが
変更が多い関税政策の見通しが立たず事業計画を練るのが難しい状況です」
カリフォルニア州のアーモンド輸出はインド、EU、中東、中国が主要マーケットです。中国は今回、アメリカによる関税引き上げに対抗しアメリカから中国に輸入するアーモンドへの関税を10%引き上げて35%にしました。
カリフォルニア大学デービス校
農業・環境学部 コリン・カーター教授
「トランプ政権1期目の2018、2019年にも同様の関税が課されました
そのとき(以前は最重要マーケットだった)中国への
アーモンド輸出は50%以上減少しました
中国は関税のかからないオーストラリアからアーモンドを買うことにしたからです」
トランプ大統領は他国に「奪われた富を取り戻す」と誓い、輸入する鉄鋼・アルミニウムに25%の関税を発動しました。多くの企業経営者が反発と不安を見せる中、共感を示す経営者もいます。
雨風や強い陽射しを防ぐために庭先や公園におく日陰棚パーゴラの製造・販売会社を経営するエルモアさんはトランプ大統領の政策によってアメリカの製造業が復活することに期待を寄せています。
パーゴラ製造・販売会社を経営
スコット・エルモアさん
「私はインディアナ州の小さな製造業の町で育ちました
町は産業のグローバル化によって衰退しました
中流家庭を支えていた全ての仕事がメキシコや中国に移ってしまったからです
国内で多くの雇用を生み出すことはとても重要だと考えています」
製造業のグローバル化に反発を感じていたエルモアさんは自社の製品は国内で生産してきました。
パーゴラ製造・販売会社を経営
スコット・エルモアさん
「(関税で)損害を被るのは海外から製品や材料を輸入し
出荷している競合他社の製品価格は今までよりも 25% 高くなるでしょう
我が社の製品は競争力が高まるので明るい見通しを持っています」
トランプ大統領の側近として政策をおし進めるイーロンマスク氏がCEOを務める電気自動車メーカー テスラは一連の関税措置について、「テスラの製造コストが増加し、他国の報復措置によって輸出競争力の低下にさらされる」と懸念を示す書簡を政府に送ったと報道されました。
アメリカの産業はグローバルなサプライチェーンに依存しており多くの企業経営者からは関税政策に反発の声が上がる一方、グローバル化の波に飲み込まれ衰退してきた業種、町に住む人々からは期待を込めたエールの声が上がっているようです。