トランプ政権は裁判所の命令を無視してギャングのメンバーとされる不法移民およそ250人を国外追放し過酷な環境で「世界最恐」と言われるエルサルバドルの巨大刑務所に収監しました。これを受けて差し止めを命じた裁判官に対しトランプ大統領が判事を弾劾するべきだとSNSで発言し最高裁判事が異例の声明を出す騒動となっています。
トランプ大統領は15日(土)第二次世界大戦中に日本人や日系人を収容所に移送するために用いられた「敵性外国人法」を適用し正当な法的手続きなしにギャングメンバーとされる不法移民およそ250人を国外追放としました。追放されたのはベネズエラを拠点とする「トレン・デ・アラグア」など複数の犯罪組織のメンバーとされ、
世界で最も過酷な環境と言われるエルサルバドルの テロリスト監禁センターに
連行されました。これに対しワシントンDC 連邦地裁の(ジェームズ)ボアズバーグ判事は「敵性外国人法」の発動は適切ではないとして国外追放を14日間差し止める判断を下し、飛行中の航空機もアメリカに引き返すよう命じました。しかしこの命令が出された後にアメリカを出国した航空機も合わせてギャングメンバーとされる人たちを乗せた3機はそのまま飛行をつづけ全員がエルサルバドルのテロリスト監禁センターに連行されました。
拘束されたギャングメンバーを受け入れたエルサルバドルの(ナジブ)ブケレ大統領は、裁判所から 国外追放差し止め命令が出されたという記事をふざけた口調で「おっと、遅かったね」と絵文字とともにコメントしリツイートしました。
トランプ政権によるとギャングメンバーとされる人たちを受け入れる代価としてアメリカはエルサルバドルに1年間600万ドルを支払うということです。アメリカでテロリストを収監するより遥かに安く済むとしています。これに対しベネズエラのロドリゲス国会議長は自国民がエルサルバドルの刑務所に送られることについて、ナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所に例えて金で売られた奴隷だと非難。全員ベネズエラに帰国させるよう訴えました。
トランプ政権が裁判所の命令を意図的に無視した可能性について命令が出された時間に3機の飛行機がどこにいたかなどが問題視されています。当初、口頭による裁判官の命令が出されその後、命令が文書にされましたがホワイトハウスのリーヴィット報道官は口頭による裁判所命令の効力を疑問視する発言をしています。
カロリン・リーヴィット報道官
「裁判所の口頭での命令と書面での命令が同じ効力を持つのか疑問があります
それも含めて弁護士が裁判所でお答えします」
17日(月)、トランプ大統領は国外追放差し止め処分を出したボアズバーグ判事を
SNSで「Crooked」イカサマ判事と揶揄し判事を弾劾すべきだと主張し、国外追放したのは残忍で暴力的、精神が錯乱した犯罪者たちだ。狂気の殺人犯はこの国から追い出すべきだとしました。
こうした中連邦最高裁判所のロバーツ長官が異例の声明を発表しました。ロバーツ長官は声明で、「200年の歴史を通して裁判所の判断を不服とすることを理由に弾劾を求めるのは適切ではないことは確立している。そのために控訴という手段が存在するのだとして名指しは避けながらも意に沿わない判事を批判するトランプ大統領の発言で政権と司法との対立がエスカレートしている事態を牽制しました。
今回適用された「敵性外国人法」は戦争時に法的手続きをせずに敵国の出身者などを拘束し、国外追放することなどを可能にするもので裁判所は、今は戦時中ではないことや拘束されている一部の人たちから冤罪を主張する訴えが出ていることなどからこの法律の適用が不適切だと判断し国外追放の一時差し止めを命じました。
トランプ大統領はこれに対し外国からの犯罪者が国内で横行する現状は戦時中に匹敵すると主張しています。
ドナルド・トランプ大統領
「バイデン(前大統領)が数百万人の犯罪者に入国を許し
他国は凶悪犯罪者をアメリカに投げ捨てて刑務所を空にしている」
ホワイトハウスは大統領が国を守るためにとる判断に対し裁判所が口をだす権利はないとしており対立はおさまる気配をみせていません。