舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
日本では、おねえキャラブームがすっかり定着したとは言うものの、
女性の同性愛、いわゆるレズビアンのメディア露出はまだまだ少ない。
一方、NYでは日本と比べるとかなりオープン。
レズの人向けの、バーやナイトクラブもある。
街中では男装の麗人が闊歩し、
普通に女性同士が手を繋いだり、
キスしている光景も良くみかける。
女優のジョディ・フォスター、
テニス選手のナブラチロワ、
上院議員のタミー・ボールドウィンなど、
同性愛である事をカムアウトした方も。
ただし、
これはNYを含む先進的ないくつかの大都市限定の事情で、
保守的なアメリカの地方となると話は別。
さてさて今回、ご紹介する「ファン・ホーム」は、
そんな隠花植物とも言えるレズビアンを主人公に据えた
初のミュージカル作品として話題になっているのだよー。
プロデュースは演劇界オフの名門パブリックシアター(「コーラスライン」「ヘアー」)。
このミュージカルの下敷きになっているのが、
アリソン・ベクダル著「ファン・ホーム--ある家族の悲喜劇」という
アート系の漫画(グラフィック・ノベル)だって事!
物語の舞台は、アメリカ、ペンシルバニア州の田舎町。
葬儀屋の長女として育てられたアリソンは
物心ついたときから自分がセクシャル・マイノリティ(レズビアン)だって気づいている。
そして何と、彼女の父親もクローゼットのゲイ(隠れホモ)だったのさ。
共にゲイである事には触れずに、しっくり行かない、父娘の関係。
一つ屋根の下、身近であるはずの家族間の秘密や欺瞞。
父親の死をきっかけに、アリソンは父親探しの心の旅に出るのですが、
デリケートな物語が、注意深く、時に美しく描かれていくのです。
本作の何がユニークかってーと・・・
前述の通り、いわゆる漫画本をミュージカルにしたところ。
映画のミュージカル化したものはいつくもあったけど、マンガは珍しい。
例えば、「ライオン・キング」、「美女と野獣」、「リトル・マーメード」、「シュレック」など、
みーんなハリウッド絡み。
いわゆる、ヒット映画の舞台化って、
人物設定が希薄だったり、
筋立てが安直な事も多々ある訳だけど、
本作の場合、登場人物のキャラが濃厚に描かれ、生命力に溢れてる。
主人公アリソンの見せ方もいいね。
幼年期、青年期、そして成人した彼女の3役を設定。
つまり3人のアリソンが劇中に出て来るってこと!
演劇によくある手法なのだが、それが全く違和感なく観れる演出がいいのだよー!
音楽を手掛けたのは、トニー賞の常連さん、ジャニーヌ・テソリ。
日本では、アンドリュー・ロイド・ウェイバー(「オペラ座の怪人」や
フランク・ワイルドホーン「ジキル&ハイド」のように有名でないけど、
創造力豊かでキャッチーな音楽を書く人なのよー!
まー、日本人好みの声をあり上げて歌い上げる熱唱系の歌はないから
「レミゼ」やウィーン産もののミュージカルがお好きな方には
物足りないかもしれないけど、スンバラシイ出来!
ちなみに、ブロードウェイではワイルドホーン系はウケないのよねー。
皆さんは、親御さんの事を深く深ーく考えた事ってありますか?
例えば、
自分にとって親ってどんな存在だったのか?
何を考えていたのか?
どんな人だったのか?
自分と正面向き合って考えることってなかなかないよねー。
でも、この作品を見たことで、
今まで深く考えたことのなかった
自分と親との関わり深さを再認識させられたー。
本作品、人間の根本の部分でユニバーサルなメッセージを含んでいる
素晴らしい舞台芸術のひとつだと思う。
こんな作品こそ、多くの方が観るべき!
ブロードウェイ進出ってことも想定できるが・・・・
レズがテーマだとNYでもちょっと無理かと・・・。
内容的に難解だし、レズのストーリーが一般ウケするかと考えたら・・
どちからというとオフ向き!
映画化もいいかもしれない!
できれば、日本人レズのためにも日本語上演は期待したいね!
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.シアタークリエさん、お願いしますよー!
公演は12月29日まで延長された!
ミュージカルって、ブロードウェイって楽しいだけでなく、
ほんっとうに役に立つ人生訓がギュっと詰まった 素晴らしいものなんですよね!
トシ・カプチーノ評:★★★★
Public Theater/Newman Theater
425 Lafayette Street
New York, NY
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トシカプ情報
歌謡シャンソンSHOW、いよいよ来週末でんがな!
http://stage72.com/ai1ec_event/toshi-cappuccinos-cabaret-show-2013/?instance_id=879
おともだちがブロードウェイに出演してるなんてちょっとカッコよくないっかぁ!?
そう、今まさに、その晴れの舞台を立っているのがエベレット・ブラッドリー。
オフ・ブロードウェイの人気パフォーマンスグループ「ストンプ」の日本公演で
一緒に仕事のした私のお仲間なのさ!
ココで爆弾発言。
実は彼とはちょこっとデートした事が・・・汗
黒ブチのメガネをかけて金色のジャケットを黒人男性がエベレット。
グラミー賞ノミネートのソングライターで、パカッショ二ストでもあり、
ブルース・スプリングスティーン率いるE Street Bandのひとりでもあるクリエイターでもあるのさ。
そのエベレットが出演しているのが、
今回ご紹介するジャズ満載のミュージカル・レビュー「アフター・ミッドナイト」 。
昨年末、NYシティ・センターで大好評となった期間限定公演「コットンクラブ・パレード」が
タイトルを変えてブロードウェイ入りしたわけだ。
さて、ジャズ界を代表するミュージシャンと言えば、
ルイ・アームストロング・・・HONDAのCMソングといえば「What a Wonderful World」さ!
デューク・エリントン・・・ やっぱ、ピアノのイントロと軽快なリズムが強烈な記憶に残る「A列車で行こう」
ナット・キング・コール・・・「そっとおやすみ」じゃなく、名曲「スターダスト」は永遠の名曲やね
綾戸 智恵・・・十八番は、浪速のおばちゃん風の「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド」
新作「アフター・ミッドナイト」の題材となったのが、"ジャズの神様"デューク・エリントン。
本作では、選りすぐりのジャズ・プレイヤー16名のひな壇を舞台上に再現。
観客をスイング・ジャズ全盛時代の1920年から30年代の
NYハーレムのナイトクラブ「コットンクラブ」にタイムスリップさせるのさ。
スタンダード・ジャズをバックに歌い踊るのは25名の歌手とダンサーたち。
エベレット・ブラッドリーはまさにその一人。
巨体揺らしながら、お茶目なキャラで観客を沸かせるのさー。
期間限定出演でショーを盛り上げるのは
人気オーディション番組、 アメリカン・アイドル出身の女性シンガー、 ファンテイジア。
ジャズも見事に歌いこなす彼女の歌唱力は突出している、さすが!
ちなみにファンテイジアの出演は来年2月まで、
彼女の降板後は、ケイ・ディー・ラング、ベイビーフェイス、トニー・ブラックストンなど
有名どころの出演が予定されている。
そのあとは???
見どころは、
◎デューク・エリントンの音楽はもちろん、映画「オズの魔法」"虹の彼方"の作曲者ヘラルド・アーリンなど
ジャズの満干全席を堪能出来る!
それらを演奏するリンカーンセンター専属のジャズの達人16名の巧みの技も見逃せないのだー。
ある意味、このショーのスターは音楽やね!
◎バラエティに富んだショーケース・スタイルのダンスも目玉。
タップ、ストリート・ダンス、バレエなど、色々な要素をミックスしたシアターダンスが次から次へと。
ダンスの権威、大澄賢也様には是非見て頂きたいね!
◎英語が苦手な外国人には優しい、言葉のバリアフリー。
ジャズ演奏と歌、ビジュアルでも楽しめるから日本人にもとっても優しいショーなのさ。
で、その出来は???
いいねー。
いいのよねー、デューク・エリントンの音楽とダンスは!
しかし
盛りだくさんなんだけれど、キョーレツな印象が残るという場面があるわけでもないのだね。
すべてがコジンマリまとまりすぎてて、驚きがない。
この際だから、はっきり言わせて頂きまーす。
足りないのは創造性の欠如。
私がいつも言うように、1+1=2のまんまじゃダメ。
そこに何らかの神反応が加わり1+1が20になるわけで・・・
デューク・エリントンの音楽だけでなく、
故人の人間臭い部分も描かれていたら、より一層の感動があったかもねー。
余談だけど、アメリカ国内では、ジャズってどちらかと言うと一部の好事家向けのマイナー音楽扱い。
ニューヨークでジャズ・ジャズと叫んでいるのは、日本人と欧州の方くらいかぁーも???
ジャズ好きのお方にお薦めの「アフター・ミッドナイト」。
マンハッタンでスタンダードジャズ漬けミュージカルを観るなんて、
口当たりの良いマンハッタンぽいカクテルを飲んだみたいに、素敵な酩酊感を味わう事ができる。
ホワイトクリスマスを、意中のあの方と一緒に甘味な一時を楽しまれては?
ミュージカルって、ブロードウェイって楽しいだけでなく、
ほんっとうに役に立つ人生訓がギュっと詰まった 素晴らしいものなんですよね!
トシ・カプチーノ評:☆☆+0.5
Brooks Atkinson Theatre
256 West 47th Street
New York, NY 10036
業務連絡ゥ〜♬
目前に迫った感謝祭の週末は、
わたしの歌謡シャンソンSHOW「結婚するってホントですか!?」ですよ~!
日時:11月30日(土)
場所:ステージ72 158 W 72nd Street 2F New York,NY
開場:午後8時、開演は午後8時半!
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その日の夜は空けといてちょー!
ちょっと早いけど、紅白なんてブッ飛ばせ!
オセチもいいけど、カプチーノもね!
皆様を笑いと涙の、感動の世界へお連れ致します!
ちなみに衣装提供は、あのワハハ本舗!
何が飛び出すやら、ふふふ。
チケットのご予約は、お電話、またはオンラインで。
デンワ予約:(866) 811-4111
オンライン予約:Theatermania.com
ショータイトルは、両予約ともToshi Cappuccino's Cabaret Show 2013。
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さて、今回ご紹介するのは、「Betrayal(背信)」。
この秋、ブロードウェイでもっとも話題を集めている芝居なのだ!
なにしろ前評判が高過ぎて、切符は超入手困難。
芝居としてまだ未完成なプレビューにもかかわらず
通常価格の150ドルのチケットはとっくに売り切れ。
約450ドルのプレミアチケットでさえも手に入らない状態だとか!?
で現在は、ダフ屋で1枚1、000ドルから2,500ドルで取引されているほどなのさ!
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この尋常でない盛り上がりの理由はと言えば、
他ならぬ主演の一人であらせられる、
ハリウッドのドル箱スター 6代目ボンド、ダニエル・グレイグ様なのさー
なんかねークレイグさん、去年の007映画の最新版のスカイホール以来、
他の追随を許さないほどの、おセックス・シンボルとしての地位を独占状態。
ショーン・コネリー氏同様、決して正統派美男子ではないのだけどねー、
一体彼のどこが、コレホドまでにもてはやされるのか?!
◎肉体派芸人、武井壮も驚きの均整のとれたダイナマイトボディ??
◎いかりや長介を思わせるちょっと出っ張った下唇?
◎はたまた杉良太郎も真っ青の流し目?
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もー、解んない、誰か教えてたもれー 。
そして、な、なんと、ヒロインの妻役は
実生活上の奥さんでもある女優のレイチェル・ワイズ。
文字通り夫婦共演と来たもんだ!
なんだろ、これって公私混同って事かぁー?
お芝居を通して、クレイグさん家の寝室を覗き見する窃視症的(のぞき見)お楽しみって事なのか?!
やはり、と言うか、絵柄よりもクレイグさんのお名前が
ドドーンと来てるポスターざんす。
レイチェル君、美し過ぎて、君が恐~い♪ by野口五郎
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クレイグ様のおセックス・アピールと英国訛をとくとご堪能あ~れ
今回、ダニエルが主演するのは、
不倫をテーマにしたイギリス人劇作家ハロルド・ピンターの「背信」。
ブロードウェイでは1980年に初演、今回で2回目の再演なのさ。
アルコランプも灯るハイソなご家庭、ステーキ!
見どころは?
昨年、日本で話題になった昼メロ「幸せの時間」の逆バージョンがコレ!
夫の親友と不倫関係に陥った妻と夫の複雑な夫婦関係と友情を描いた作品を
実生活でリアルな夫婦がどう演じるのかってところが目玉!
そしてもう一つは、映画・演劇界の巨匠マイク・ニコルズ(「スパマロット」05年)の演出。
「スパマロット」(05年)と「セールスマンの死」(12年)の再演でトニー賞演出賞に輝いた
ニコルズ様がどんな工夫を凝らして3人芝居を見せるのか!?
で、アクション抜きのクレイグ君はどうだったのか!?
本作では、エマとジェリーの出会い→不倫→破局の9年間を、時間を遡って描写しているのさ。
舞台転換は演劇の見物のひとつなのだが、 3、4回目くらいからちょっと辟易。
シーンごとの転換にいちいち15秒ほど待たされることで、集中力は削がれ、ストレスさえ感じてしまうー。
ハリウッドのドル箱スター二人の演技に期待したのだが、
本作に至っては、薄っぺらい安直な芝居にみえたねぇー。
どうしたっちゃのよ、演劇界の巨匠マイク・ニコルズ様?
観劇後、脳裏に刻まれるのは・・・・・・
残念ながら、生ダニエルを見たことと、
レイチェル・ワイズがえりゃあ美しかったという二点だけ。
休憩なしの90分一本勝負だったのは、 観客を途中で帰らせないため秘策?
そいうことだったのかもねぇー!
最後にクレイグさんへ一言
演出の問題もあると思うわ・・・
でもね、あーた、せっかく採算度外視でブロードウェイに出んだから、
ボンド並の気合いの入った芝居をみせて欲しかったわ!
今回、私からは"参加賞"しか贈呈できません!
上演は1月5日まで。
ミュージカルって、ブロードウェイって楽しいだけでなく、
ほんっとうに役に立つ人生訓がギュっと詰まった 素晴らしいものなんですよね!
トシ・カプチーノ評:★
Ethel Barrymore Theatre
243 West 47th Street
New York, NY 10036
私のお父様は呑む打つ買うの三拍子がそろった典型的な九州男。
そんな無骨で粗野な父と、おママゴトとゴム跳びを好む様な私と馬が合わけも無く
反抗期が始まる中学時代から父が亡くなるまで、ほとんど口を聞くことがなかったのさ。
52歳とい若さで亡くなった父。
その当時、私は21歳。
後悔先に立たずだが、お酒が大好きだった父と
一度でもいも焼酎でも一緒に呑んで語り明かしてみたかった・・
というのが、私の人生の唯一の後悔さ。
さて、今週紹介するのは新作ミュージカル「ビック・フィッシュ」。
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これがまた、父の息子の相克と和解を描いたファンタジードラマなのです。
わたしなんて、そのプロットだけでなんか身につまされちゃう。
「ビッグ・フィッシュ」に出てくる父親のエドワード・ブルーム氏は、カプチーノパパと違って天真爛漫。
のべつ荒唐無稽なホラ話で周りを煙にまいてる様な、万年子供みたいな愛すべきおヤジさん。
日本で言ったら、バカボンのパパとか高田純次あたりの路線かな?
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息子のウィルは子供の頃こそ父親の大言壮語を素直に受け留めるが、
成人後は段々理解に苦しむ様になり、軽い侮蔑や疎ましささへ感じる様になってしまう。
果たして、病に冒された父親と息子ウィルは理解し合う事ができるのか?!
本作の下敷きになっているのは、ダニエル・ウォレス著『ビッグフィッシュ - 父と息子のものがたり』の原作と
映画『チャーリーとチョコレート工場』や『アリス・イン・ワンダーランド』などでおなじみ、
ティム・バートン監督の映画(03年)
タイトルが「ビック・フィッシュ」なら、
舞台裏のクリエイターも役者達も大物揃い!
演出・振付は、スーザン・ストローマン。
ミュージカル「クレイジー・フォー・ユー」(92年)の振付で大ブレイクした彼女は
その後、トニー賞を総なめにした大ヒットミュージカル「プロデューサーズ」の演出振付も手掛け、
今ではブロードウェイを代表する女性演出・振付家。
(下の画像、修正キツ過ぎ、まるで別人、っw)
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音楽は、アンドリュー・リッパ。
ミュージカル「アダムス・ファミリー」で注目されたベテラン作曲家。
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総勢27名の大所帯で主役を張るのは、二枚目からコミカルな役までこなす
トニー賞俳優、ノバート・レオ・バッツ。
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この三人がタッグを組めば、大ヒットしトニー賞間違いなしってほどの最強メンバーによって
制作された「ビック・フィッシュ」なのだが・・・
そりゃー確かに、ドエリャー金かけたのが一目瞭然
舞台装置は飛び出す絵本のような楽しさいっぱい。
そこにはエドワードの妄想の世界から飛び出したキャラクター達が
工夫を凝らした衣装を身に纏い、めくるめく特殊効果が続々登場。
まるで、ディズニーパレードを観ているような豪華さ。
金かかってるゥ〜&気合い入ってるゥ〜
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なのになのに・・・
エドワードのファンタスティックな創造の世界のヴィジュアルを
最大限に膨らまるという演出なんだそうだけれど、
その分、なんだか登場人物の存在感が薄まっちゃってるの。
例えばストーリーテーラーであるエドワードは、
ディズニーランドのツアーガイドにしか見えない。
これでは、いくら名優ノバート・レオ・バッツが大熱演しても無理ってもん。
また、ストローマンが得意とされる振付も冴えがなく、彼女らしさに欠けた出来。
音楽も・・・観劇後、全く記憶に残っていない。
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制作過程に於いて中堅以上の個々の担当者が、手堅い仕事をしてそれを積み重ねて行けば、
きっといい作品に仕上がると期待しちゃうわけですが、
1+1=2のまんまじゃダメで、そこに何らかの触媒反応が加わり、
1+1=10にも20にもなる奇跡が起こりえるのが摩訶不思議な舞台の世界。
それって例えるなら、普段のチャイナタウンやトレーダーズ・ジョーズではなく、
Dean&Delucaのオルガニック高級食材で、気合いで調理した晩餐が、
どうも今イチだったみたいな感じ・・とでも言えば良いのか?
塩気が足りなかったの?
火力が弱かったの??
レシピが間違ってるの???
愛情が足りなかったの????
と詮索してみても始まらない。
残念ながら、私にはこの舞台上にミューズが降り立って
ミラクル起こすのを見る事は出来ませんでした。
それともう一つ! お客さんって正直。
一幕後の休憩中、観客がどれほど、作品にのめり込んだかは、
劇場内に響く観客の声や、発散されるエネルギーですぐに察知出来る。
残念ながら、本作の場合、興奮した会話も聞こえず、テンションも上がらない。
キラビやかな体裁のショーなのだが、内容的には、スモール・フィッシュになっちゃったヨ。
アチャー、みたいな・・・。
これは短命に終わりそうな気配が・・・
来年1月5日が最終日かもかもーん!?
ミュージカルって、ブロードウェイって楽しいだけでなく、
ほんっとうに役に立つ人生訓がギュっと詰まった 素晴らしいものなんですよね!
トシ・カプチーノ評:★★
Neil Simon Theatre
250 West 52nd Street
New York, NY 10019
最後に前回、お知らせした
私の歌謡ションソンSHOW「結婚するってホントですか!?」
チケット発売開始しました!
ご予約は、お電話、またはオンラインで。
デンワ予約:(866) 811-4111
オンライン予約:Theatermania.com
ショータイトル名は、両予約ともToshi Cappuccino's Cabaret Show 2013となります。
皆さんのお越をお待ちしております。
みなたまァー!
皆様には、過去に息が止まる様な痛ーい記憶ってなあい?
たとえば、家族のこととか?
愛して止まない親・姉弟も、同居しているとあまりに近過ぎて、
ついついお互いワガママ放題になってしまったり、礼儀を忘れたり・・・
あげくに自己嫌悪の罠にドーンと落ちてギャーッ!と・・・。
思い返すたびについ昨日の事の様に苦しくなって、
いやーな汗出ちゃうヨ、みたいな・・・。
今回は、アメリカを代表する劇作家、テネシー・ウイリアムズの出世作であり、
自伝的要素が色濃いと言われる追憶の物語「The Glass Menagerie(ガラスの動物園)」をご紹介しまーす!
このタイトル・・
登場人物のコレクションからきたもの
狭い居住空間に閉じ込められ、
反目しあう追憶に縛られた哀れな動物達の、
限りなくあやうい家族関係を象徴する秀逸なタイトルじゃあーりませんか!
それだけでも、テネシーってスゴーい!
主人公のトム青年がたどる彼の三人の小さな家族の「追憶」。
それは、彼にとってあまりに辛い
しかし、彼はそれを語らずにはおれない。
表面的にはありふれた家族
が、そこに潜む不幸のレシピ
まず、母、アマンダ
評判の美人でイケイケだった若い頃の栄光から、どーしても抜け出せない。
年老いた今の現実は、夫に逃げられ、
二人の子供は自分の期待にぜんぜん答えてくれない。
しかも、狭いボロアパートに冴えない娘と息子と閉じ込められている。
そのありえないギャップの大穴を埋めるべく、とにかくしゃべくりまくる!
そんな彼女の姿に周りはどん引する。
歳を重ねれば、自然に世界が狭まって行くのはトーゼンなのかぁ?
せめて自分は、いつまでも若く飛び跳ねていきたいねぇー!
欲望と執着。
これも度が過ぎると不幸の素なのだぜよー。
トムの姉さん、ローラ
病的なほどの引っ込み思案で足に障害をもってる。
自分のコルセットの音が教室にこだまするのが耐えられなくて学校を中退。
ガラス細工の動物達に癒されてというヲタクチックな性格。
コンプレックスに囚われた、行かず後家予備軍。
おまけに、お母さんからは何が何でも玉の輿のプレッシャー。
異性どころか他人とも、まともに口も利けないのにね。
主人公トム
母親と同様に姉の事をとても心配している
ウザい母親の事だって憎みきれる訳が無い。
作家になる野心を満たす為に家を出るのだが、
やはり家族を見捨てたという記憶が癒える事の無い傷口となって彼を苦しめる。
これは自立した人が家族に対して、
大なり小なりもっている負い目。
私の場合、特にあるかな・・汗
母親は、娘ローラをなんとか嫁がせたいと、
息子トムをせっ突いて、同僚のジム青年を自宅に招き寄せる。
このジム青年、フットボール選手のスターだった過去の栄光にスッキリかたをつけ(対アマンダ)
社交的にポジティブなエネルギーを振りまき(対ローラ)
野心などもたず、現実的な生活を目指す(対トム)
主役の三人とは全て対照的な性格。
この逆写しの鏡のようなジムの投入によって、
ぶつかり合う三人の自我の衝突が沸点に達してしまうのだ!
ここに描かれている、追憶の呪縛。
理想と現実のギャップ。
親離れ子離れ出来ない大人達。
住宅環境と経済状況の悪化でアメリカでも増えている成人親子の同居。
結婚出来ない若者達。
などなど、とーってもコンテンポラリーな題材を
ふんだんに凝り込んでいる内容は、
60年以上経っているに全く色褪せてない
やっぱり、テネシーってスゴーい!!
初演が終戦の1945年
今回で6回目の再演となる本作の見所は、
何と行っても主人公達の圧倒的な演技力!
トム役は、映画「スタートレック」の副長スポック役でおなじみ
ハリウッド俳優、ザカリー・ クイント。
前回紹介した「ロミオ&ジュリエット」でロミオを演じた
オーランド・プルームも期待以上、あっぱれだけれど
崩壊寸前の精神状態を目でも演技するクイントの演技力はそれ以上!
母親アマンダ役のチェリー・ジョーンズは
映画版で見た大大女優キャサリン・ヘプバーンもぶっ飛ぶ
絶妙な抑揚を効かせた大熱演!
演出を手掛けたのは、ミュージカル「ワンス」でトニー賞を受賞したジョン・ティファニー。
贅肉を削り取った簡素なステージ作りがお得意な彼は
本作でもアパートの外壁にある非常階段と
三人掛けのソファー、食卓のテーブルと椅子だけという、
見た目は低予算のオフ・ブロードウェイのような空間を演出。
ところが、ドッコイ
舞台はまるで海上に浮いている小島
ステージが水で囲まれているのさ!
その舞台装置がまさに
一般社会から孤立したウイングフィールド一家を囲む動物園の檻の様に、
無慈悲で理不尽な現状のなかで愛憎を繰り広げる家族模様を際立たせる!
まー役者にしたら、
舞台上に何もない分
役者の粗が見えやすく
力量も試される怖い演出法なのさ。
このやり切れなさに満ちているテネシー・ウイリアムズの傑作を、
至高の演技と研ぎすまされた演出で完成させた本作品。
皆様の心にもガッツリと響くハズ!
明るく楽しいミュージカルも良いけれど、
たまには現代社会の苦悩をえぐり出した問題作に接して、
皆さん自身の来し方行く末に思いを馳せるのはどうでしょう?
だって、食欲の秋と同時に自分を深ーく顧みれる秋でもあるわけですからねぇー。
公演は、来年1月5日まで。
ミュージカルって、ブロードウェイって楽しいだけでなく、
ほんっとうに役に立つ人生訓がギュっと詰まった 素晴らしいものなんですよね!
トシ・カプチーノ評:★★★★
Booth Theatre
222 West 45th Street
New York, NY 10036