舞台芸術評論家、プロデューサー、タレント。「STOMP」,「RENT」の日本公演に携わる。コメンテーターとしてテレビやラジオにも活動の場を拡大。トークショー「トシ・カプのブロードウェイ言いたい放題」は、内容の濃さと面白さで好評を博す。NYのジャーナリストや演劇評論家130名で構成されるドラマ・デスク賞の審査員を務めている。ワハハ本舗所属。
不肖ワタクシの年末特別企画「シシーボーイ」
皆様のおかげをもちまして、
大盛況のうちに日本語版を終了することができました!
仕事納めや忘年会で多忙を極める中、
お越し下さった多くの方々に深くお礼申し上げます。
次は、来年1月24、25日のバタ臭英語版へ,レッツゴー。
目の肥えた(?)原住民ニューヨーカー達に、
日本のシャンソンを引っさげて果たし状を
突きつける様で、嬉しい様な怖い様な・・・
このスリリングな瞬間・・・ 皆さん、お見逃になる手はなくってヨ!
さて、ご自身の伝記「紫の履歴書」の132ページに
「自分の美貌が恐ろしく憎い」・・
と書いてのけた美輪明宏さん
んまーっ、私もそんなこと一度でエエから言うてみたかった・・苦笑
イヤーね、人間、どうせ生まれてくるのなら、
醜く生まれるより美しく生まれる方がいいに決まっているわけで・・・
なーんて簡単にいっちゃうと、
「なんて軽薄なっ!」
ってしかられちゃいそうだけれど、
お金や若さは勿論の事、
美貌が絶大な力を発揮する瞬間を目撃する機会が、
そこいら中に転がっているマンハッタン、
それもショービズの世界なんかに浸ってると、
そんなスーパーフィシャルな事実も否定し難いわけでして・・・
そんな或る意味無慈悲な世の中。
反対に醜く生まれたことで、架せられた十字架、
社会のなかで不運不幸に見舞われ過酷な運命を
たどることも容易に推し量られるわけでして・・・。
まさにそんな残酷な運命を辿った・・・実在の伝説的人物
「エレファントマン」
その舞台版が、ただいまブロードウェイで絶賛上演中なのさ!
主演は・・ハリウッド俳優、ブラッドリー・クーパー
ブロードウェイでの舞台は9年ぶり・・
クーパーの舞台デビューは、
ジュリア・ロバーツ主演の芝居「スリー・デイズ・オブ・レイン」
当時の彼は、ロバーツの影に隠れ、まったく目立たず が、
映画「ハングオーバー」で大ブレイク。
今や、押しも押されぬハリウッドの大スター。
どっちかつーと、軽めのラブコメやおバカ野郎映画を大ヒットさせて
スターダムにのし上がったハリウッドの二枚目俳優が、
2作目の芝居にと選んだのが、真逆の超シリアス舞台。
「僕にだって、チャラい色男役ばっかじゃなくて、
エンギハのシブーイ役だってできるんだーい!」
というクーパーさんの
ココロの声が
聞こえてきそうな役どころじゃなーい?
そのチャレンジ精神には敬服
バーナード・ポメランスのトニー賞受賞作で、
グロテスクな奇形児ゆえに
エレファントマンと呼ばれた実在の青年役。
1980年に公開され、
日本でもセンセーションを引き起こした、映画版では、
いかに観客を驚かせるかを考え、施された特殊メイク
舞台版は・・・ 特殊メイクは無し。
素の顔と体つき
ちなみに一幕はボクサーパンツ一枚だけの裸
要は、見えざる顔や体の奇形を
演技だけで表現するだけという、
ハイブロウな演出だ。
大道具のない舞台はガラーンと・・ 多少の小道具だけ
隠れ蓑がないが故に
役者と演出家の力量が問わる
台詞も少なく
その存在感と肉内の駆使による
高度な演技力が求められる本作
ブラッドリー・クーパーがみせた奇形児、
ジョン・メリックの歪んだ顔と
障害者の歩行演技は、
血の出るような練習した成果?!
素晴らしかったし、芝居にかける意気込みもよーく伝わって来たが
心に染みる感動的な演技であったかというところまでは行かず。
特に、エンディングのエレファントマンの横になって
自殺するという重要なシーン。
残念ながら、その演技にも心打たれることなし。
次作に期待したい!
所で、劇場側の都合で
話題の再演ミュージカル「SIDE SHOW」がまさかの閉幕宣言
https://www.fujisankei.com/toshicappuccino/2014/12/sideshow.html
スティングのミュージカル「ザ・ラスト・シップ」が
不人気から 生き残りをかけて、スティング本人を投入!
https://www.fujisankei.com/toshicappuccino/2014/11/thelastship2.html
安泰なのは、ハリウッド俳優、
ブラッドリー・クーパー
ヒュー・ジャックマンのお芝居だけ!?
と悲喜こもごもの今シーズンのブロードウェイ。
結局、有名人というある意味見せ物がいないと
興行が成り立たないのではという
ブロードウェイにあってはならない状況に
なりつつあるのをかいまみてもうた。
もし、日本で本作を上演するのなら すでに、
藤原竜也様、市原正親様で上演されているが・・
次作には、
城田優さま
彼なら、美でもって、醜を演ずると言う、
意想外の演出を生かす事が出来るかもかもーん????
公演は2月22日までの限定!
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★
Booth Theatre
222 West 45th Street
New York, New York 10036
師走真っただ中!
特に感謝祭からクリスマスまでの数週間
と来た日にゃ、あーた、
もうテンテコ舞。
猫の手どころか、
我が家の愛息キンちゃんの
小さなお手々も借りたいよホント!
坊さんも走るくらいだそうだから、
演劇評論家兼エンタテナーの
このアチシだって全力疾走よ。
特に今月は20、21の両日に、
私自身の渾身のプチ・オフブロードウェイ・ショーを控えて、
不思議に充実感と高揚感の入り交じった日々を過ごしておりまする。
皆様とDuplexでお会いする日を楽しみにしちょりまーす♡
さて、こんな地に足のついてないような、
慌ただしいこんな季節に見るべき舞台はと言えば、
やれ至高の芸術性だ、
人間の心の闇を深く掘り下げた問題作だ、
なんて小難しい作品ではなく、
なんかこー単純明快、
前頭葉なんて一切使わなくて済む様な
お祭り気分の作品が
向いてるんじゃないかしら。
例えば、ホリデー・シーズンの定番、
ラジオシティ・ミュージックホールの
「クリスマス・スペキュタキュラー」
ベタベタのコテコテだけれど、
あくまでキラビやかに、健全に、
綺麗なロケッツねーちゃん達のおみ足で
元気をもらっちゃえ、みたいな・・・。
おまけに劇場周辺は
ツリー、リース、電飾が至る所に施されて、
そのままショーのクリスマス気分の延長線上って感じ。
まさに
♪ It's a Most Wonderful Time of the Year ♪
それはちょうど年末年始の
日本のテレビに欠かせない、
「おめでとうございま~す」の
海老一染之助・染太郎師匠のノリと同じ。
傘の上で毬を回すだけのシンプルな芸だけど、
おせち料理くらい必須でしょ?!
この季節、他にもブロードウェイには
ホリディ・シーズンのエンタメが目白押しなのさ!
そのひとつが、今回ご紹介申し上げる、
世界各国で大成功をおさめているマジック・ショー
「ザ・イルージョニスト-不可能を目撃せよ!」
劇場に入るなり、目に飛び込んでくるのは
舞台上に吊られたデッカいビデオスクリーン
舞台の両サイドにはバンドとDJブースが設置されてる。
こりゃぁ、ブロードウェイというよりラスベガス!
でも、不思議と本作がミュージカル専用劇場、
マリオット・マーキースにシックリくるのはなぜ???
(皮肉よコレ!)
主な登場人物は7名の魔術師!
世界各国から選りすぐりの強者を
ニューヨークに集結させたとか!?
マジシャンのAKB48方式とでも言うのかしら?笑
見どころは・・・
◎マジック・ショーの鉄板、人間の胴体ぶった切り、ぎゃーっ!
切られたあとの上半身と下半身の動きは摩訶不思議!!
その他、見どころ満載なので・・観てのお楽しみ!!
◎客いじりの達人、アダム・トレント
「アメリカン・アイドル」の司会
ライアン・シークレストを思わせる
甘いマスクと均整の取れたボディのイケメンさ
巧みな話術だが、なんと台本はなく、ほぼアドリブで
ショーを進行させているという・・・
卓越したMCの名人芸をとくとご堪能あーれ。
◎観客参加型
最初から最後まで観客を舞台に上げる演出のてんこ盛り。
個人的にあまりの多さに辟易したが、
舞台に上げられた人は、皆さんご満悦の様子。
まー、それはそれでええじゃないかい。
◎そして、その魔術師をサポートする
美男美女の マジックアシスタント、
その中にはなんと日本人も!
日本人俳優、ダンサー、丘山晴己(きやまはるき)氏。
美男子のマジックアシスタントとして主役を食うほど存在感だ!
余談だが、ハルキ君のお父様と私は古くからのお知り合い。
初めてはるき君を紹介されたのは彼がまだ20歳のころ?
その滴る男の色気に、もうメロメロ。
しかも、素直で優しく良い奴なのさ!!
そんな可愛い弟分、いや息子みたいな彼の
ブロードウェイ・デビューに心から拍手を贈りたい!!!
脳みそを使わずに観れるこのショー、とにかく楽チン!
が、しかし
いくら何でも詰め込み過ぎ!!
ギンギンのロック・ミュージック
DJ
ダンス
レイザー光線
観客参加型のオンパレード
せっかく超一流の手品師の
名人芸が見られる絶好の機会なのに
演出過多のため、
せっかくの手品の妙技も集中出来ない・・・
もっとじっくりゆっくり見せろや!
加えて、どーも頂けないのが
舞台上の大型ビデオスクリーン
そりゃー1600席のデカい劇場だから
手先のマジックをとくと観客に見せるには
大型スクリーンなのかもしれない。
けれどもナマの舞台上のマジックよりも、
大型スクリーンのほうばかり見ているってどゆこと?
これじゃあ自宅の大型テレビ見てるのと同じゃない!
これらてんこ盛り演出も、
にぎやかにお祭り気分をもり立てる
一つのアプローチだとは思う。
しかしもう少し整理して、
時には抑制を利かせて、
引く所は引いて
メリハリを付けて欲しかった。
でないと才気あふれる
マジシャン達へのリスペクトが感じられない!
ワタクシとしては、ダメ出しせざるを得ません。
さりながら、チケットの売れ行きは絶好調。
すでにラジオシティ・ミュージックホールの
「クリスマス・スペキュタキュラー」を 脅かす存在?!
そういえば、過日6番街で綺麗なロケッツのお姉ちゃんたちが
寒い中「クリスマス・スペキュタキュラー」のビラ配りをしてたわぁー
そんな光景見たの初めて・・・
もし、本作を日本人版で上演するなら・・・
引田天功
ミスター・マリック
ゼンジー北京
マギー司郎
そして、キャラメルマシーン
LA公演では、中学レベルの英語で観客を抱腹絶倒にした
ワハハ本舗のマジック部門の期待のホープなのさ!
公演は1月4日までの限定!
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★
Marquis Theatre
1535 Broadway
New York, New York 10036
ブロードウェイのど真ん中で寝起きするように
毎シーズンごとに、片っ端から、もー見境も無く
70本前後の新作を見続けている、観劇あばずれのワタクシ。
はからずも、
そんなスレッカラシになってしもうたワタクシが、
ここ数年のブロードウェイ作品に思うのは
プロデューサー主導による売れ線ミュージカルの氾濫
つぎ込んだ多額の製作費用を回収せんと、
ビジネスライクに観客の五感六感に山勘かけて、
痒い所に手が届かんばかりに
売れ筋ミュージカル制作に血道を挙げている。
結果
ほとんど、へつらうがごとく
客の嗜好に迎合した作品ばかり・・
そんな中で、たまーにだけど頑固に、
全く逆のアプローチで、
作り手である自分たちが
本当に創りたいミュージカルに
拘り続けた作品が、
今期、再演という形で
ブロードウェイによみがえった!
それこそが今年8月、当ブログ
https://www.fujisankei.com/toshicappuccino/2014/08/sideshow.html
で前情報として取り上げたミュージカル
「Side Show」
実はなにを隠そう、
本作の作曲家ヘンリー・クリーガーさんは、
私のグリーンカードのスポンサーなのであーる!
神様仏様なヘンリー様
だからちょっと身内への判官びいきが
入っちゃうってのは否めないかも・・・
でも、なるべく公平に私情を
排してレポートいたしますぅ〜♡
初演は1997年
開幕からたった3ヶ月足らずで閉幕の憂き目に・・・
オープニング当日、不覚にもぎっくり腰に
杖をつきながらも劇場へ・・・とほほ
踏ん張って観劇に漕ぎ着けた
ワタクシのかいあってか、
初演では、若干錯綜気味プラス、
どこか独りよがり的な印象しかなかった作品が、
なーんとこの度の再演、
演出家の采配の妙技で、
同じミュージカルとは思えない程
ステキな作品に仕上がっているじゃーあーりませんかーッ !
醜いアヒルな舞台が、華麗なスワンな舞台への化身を
遂げていることを実感!
本作の初演をご覧になってない方のために
どんな作品かというと・・
一昔前の日本のお祭りにもあった見世物小屋
サイドショーをテーマに、
実在のエンターテナー、結合双生児ヒルトン姉妹を描いた作品。
見どころは・・・・
◎リアルなフリーク
再演ではのっけから 個性的なフリークたち
1人ずつを生き生きと描き出している。
それはもう、これがミュージカルだということを
忘れてしまうくらい
見世物小屋的な雰囲気を体感させてくれるのさ!
またそのフリークそれぞれがかなりハイクオリティ!
来年のハロウィーンのご参考にどうぞ!
◎ヒルトン姉妹を主演キャスト
ヴァイオレット役:エリン・デービー
デイジー役:エミリー・パジェット
双子でも性格の違いをきちんと演じ分けているだけでなく
広い音域と歌唱力が求められるヘンリー・クリーガーの曲を
見事に歌いこなした二人の歌は聞き応え十分!
◎ジェイク役に扮したデイビット・セント・ルイス
男っぽいルックスだけでなく、
響き渡る彼の中低音は超セクシー!
女性は子宮に、男性には前立腺に
昇天しそうな勢いでガンガン響きます!!
きゃっ!
◎演出
再演版の演出家はビル・コンドン
,
,
今回のすんばらしいリニューアルは彼の功績に拠る所が大。
,
,
これまでにも大ヒットしたミュージカル映画「シカゴ」の脚本や
ミュージカル「ドリームガールズ」映画化した
敏腕映画監督でいらっしゃられるのよ。
◎ヘンリー・クリーガー作曲の音楽
全曲の詩と曲が絶妙にマッチ!
特に「Who will you love me as I am 」 「I never ever leaving you」 の2曲はずっしり心に響きます!
ヘンリーさんの作曲家としての才能を改めて実感!
決して贔屓目じゃございません!!
。
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。
ニューヨーク・タイムズ紙が太鼓判を押す
ミュージカルのお墨付きもらった今回の再演版。
トニー賞リバイバル賞のノミネートは十中八九決定!
予定調和満載のディズニー・ミュージカル的なものに
飽き足りない本格派のアナタにおススメの作品です!
もし、母国で本作を翻訳上演するならば、
ヒルトン姉妹には
.
ちと古いけど、双子のザ・ピーナッツはドンピシャ!
なのだけど、すでに片方はお亡くなりに(合掌)
なので・・・
歌唱力と話題性を考慮すると・・・
もののけ姫の米良 美一さん
と
オペラ歌手の岡本知高さん
日本を代表するオペラ歌手の競演に
新しいミュージカルファンを開拓できるかもよー!
ブロードウェイってミュージカルって、楽しいだけでなく、
人生訓がいっぱい詰まった 素晴らしいもんなんですね。
トシカプ評:★★★★
St. James Theatre
246 West 44th Street
New York, New York 10036
過日当ブログでご紹介もうしあげた、
ポピュラー音楽界の重鎮スティング氏肝いりの、
新作ミュージカル「ザ・ラスト・シップ」
あまりにも暗ーい内容に、
その船出に立ちこめる暗雲を
案じておりましたの。
詳しくはココをご覧アレ!
https://www.fujisankei.com/toshicappuccino/2014/11/the-last-ship.html
そのミュージカル「ザ・ラスト・シップ」が
処女航海(開幕)に旅立ったのは10月26日。
まるで、大海は暴風雨と荒波の大しけのごとく
チケット売上げは伸びず、
航海(公演)を継続することさえ危ぶまれる事態に・・
そんな最悪の事態を避けるために、
なんとスティング氏は、本作からの収入を放棄され、
作品の継続に協力されていた。
がしかし、それも限界
それでも、約7000万円かかる週の制作費に対して
先週末のチケット収入は、約6000万円と赤字続き
集客率も約62%と沈没寸前
そんな危機的状況の中、
浮上した最終兵器 が・・・・
な、ぬぅあんと・・・・・
スティング様ご本人
主役としてご出演されることが決定!
スティングと入れ替わるジミー・ネイル(左)
。
余談だが、スティング様
1989年の再演ミュージカル「3文オペラ」の
マクベス役でブロードウェイ・デビュー
今回が2回目のご出演!
新作ミュージカルの不人気という
不幸な状況ではありますが、
観客にとってはスティング様自らが、
思い入れたっぷりの役柄を
演ずるのを観る事ができる、
と言う事なったのは、
不幸中の幸いと言うか、
ひょうたんから駒というのか・・・
なんだか一気に豪華特典付き!
いずれにしてもスティング様のご出演は、
12月9日から来年1月10日までの一ヶ月限定
この期間のチケットは間違いなく完売だろうねぇ!
しかしそのあとが問題で・・・
その人気を継続できるか!?
いや・・・
おそらく無理なのではないでしょうか・・・。
この際です、
いっそのこと
スティング様の出演を
限定2ヶ月にして
そのまま閉幕された方が
スッキリすると思うのだけど・・
ともあれ、スティング・ファンには
驚きのクリスマス・プレゼントになったようねぇー!